平成26年3月5日
県政ながの 宮本衡司
◎ 建設産業の育成について
Q このたびの県内の記録的な大雪により、お亡くなりになられた方、被災された皆様に心よりお悔やみとお見舞いを申し上げる。特別豪雪地帯に住み、大雪に慣れている私たちにとっても、身につまされる思いである。また、昼夜を分かたず除排雪に取組んでいただいている、国・県・市町村・建設業の皆様に心より敬意と感謝を申し上げる。
平成18年豪雪や長野県北部地震でお世話になったご恩返しにと、北信地域の建設業者がロータリー除雪車や機材を持ち込み、東信地域に応援に行ったと聞いている。改めて、非常時の際には建設業者の初動体制が命運を左右すると再認識した。
2月10日付の新聞報道によると、千葉県のある地域で県発注の土木工事で談合を繰り返したとして指名停止を受けた建設業者が指名停止を一時解除され、県の委託で除雪作業を行ったということだ。この大雪のなか除雪に必要な機材や人手がある業者を探してみたが、見つからず、住民の安全確保のため、止む無く、背に腹は変えられないといったところか。
長野県でも非常時にはこのような措置がとられるのか、建設部長に、またこの実態をどう思うか、率直な感想を知事に伺いたい。
A(建設部長)
千葉の事例は、新聞報道から推し量ると、温暖で雪がほとんど降らない地域であるにもかかわらず、今回は記録的な大雪であったこと。また、この地域で除雪用に転用可能な機材を保有する建設業者の多くが指名停止を受けていたこと、等の要因から、県民生活の確保を優先し、今回の措置がとられたものと推測している。
長野県の入札参加資格停止要領によると、災害等に係る緊急を要する応急工事等で、「やむを得ない事由」がある場合には、例外として随意契約を可能としており、本県においても同様の措置をとることとなると考える。
(知事)
千葉県の事例については、温暖な地域での突然の大雪により混乱した県民生活を、より早く復旧すること優先させた措置と考えている。
長野県においても、記録的な降雪となった今回は、契約業者以外の建設業の皆様方にも広く力をお借りし、除雪に対応していただいたところ。
ご協力いただいた関係の事業者の皆様方には、心から感謝申し上げる。これからも地域に大きく貢献いただいている建設産業の健全な発展のため取組んでいきたい。
普段雪の少ない地域にとっては、今回の大雪は将に想定外であったのかもわからない。しかし、最近の自然災害を見た時には想定外もありうることを念頭に、今後の対策を考える必要があると考える。
災害発生時、直ちに対応を依頼できるのは何と言っても地元の建設業者である。不必要な公共事業を行わないことはもちろんのことだが、現在、長寿命化を図っている公共財も何れは建て替える時期が来る。適正な数と規模を有した地元の建設業者は絶対に必要だ。
このたび、長野県の契約に関する条例(案)が上程されたが、改めて、この条例は何にポイントが置かれているのか、また、建設業を取り巻く環境が、これによりどのように好転するとお考えか知事に伺いたい。
A(知事)
県の契約のあり方は、様々な場面で社会に影響を与えるものであることから、契約を通じて、より良い社会を作る方向に役立てていこうと考えている。
長野県の契約に関する条例案における建設産業の育成として、県民の安全・安心のために活動する事業者の育成、地域を支える建設企業の受注機会の確保や専門的な技術の継承、また、担い手の確保としては、雇用の確保や賃金が適正な水準にあることなどの労働環境の整備、等をポイントとしている。
これらを基本理念とし、これに基づき、工事箇所を考慮した地域要件の設定、地域の実情に応じた多様な入札方式の活用、過度な競争を防止するダンピング対策、等の具体的な施策について、長期的かつ統一的に取り組むことにより、地域を支える地元建設企業が将来にわたり活躍できる環境としていくことを期待している。
かつて、談合問題等により建設業者の存在を、あたかも社会悪であるかのような風潮が世の中に蔓延した不幸な時代があった。
更に、入札制度の見直しにより過度な低価格競争に陥り、建設業者の体力が低下し、雇用確保や将来に向けての設備投資が為されず、その結果として県の税収も上がることなく、地域の不況を招き、今回のような大雪にも充分な対応が出来なくなってしまったのである。
建設業の衰退により、はからずも県民生活が脅かされている現実を、今回目の当たりにし、誠に歯がゆい思いがする。
知事におかれては、県民の安全を守り、地域を守る建設産業の育成に向けた施策を、より一層進めていただくよう強く要望する。
◎ 豪雪地帯をはじめとする過疎地域等における集落の保全・維持について
Q 新年度、職員による政策研究提案として、「克雪住宅普及促進事業」が新規事業として計上されている。特別豪雪地帯の住民にとって、大変ありがたい事業と感謝申し上げる。
平成18年12月定例会において、雪国集落に欠かせない、いわゆる「たね」に、冬期間も途切れることなく水が流れるよう、用水の整備・改修の補助制度創設の検討を要望したところ農政部長から、「地域用水を確保するための水路用水について現状を把握する必要があるので、関係する市町村とともに、豪雪地帯の農業集落にかかわる用水路の実態について調査をしたい。」との答弁をいただいている。
県におかれてはこの調査をいつ実施されたのか。また、調査の結果はどのようなものであったか、農政部長に伺いたい。
A(農政部長)
用水調査は平成19年1月から7月にかけて、特別豪雪地帯を有する北安曇、長野、北信の3つの地方事務所管内において、受益面積が概ね3ha未満の農業用路のうち、雪を融かすための用水として利用されている水路を対象に関係市町村とともに実施。
この調査によると、消雪に利用されている農業用水路は31路線、31kmあり、そのうち29路線、約23kmは北信地方事務所管内にある。また、31路線中老朽化が著しく改修が必要な水路は、22路線、約10kmとなっている。県としては、市町村からの要望を受け、飯山市の1路線、355mについて改修工事を実施した。今後も市町村等からの要望に応じて、国庫補助を活用し支援していく。
また、「たね」の主な用途は冬の雪消しではあるが、この他にも防火用水はじめ様々な機能を有している。
阿部知事、伊藤教育長にも昨年お出でをいただいた、飯山市の小菅、小菅神社のおひざ元の集落だが、やはり多くの雪が降るところである。この小菅の集落にも地元の人が「かわ」と呼んでいる「たね」が多くみられ、小菅の景観を作り出している。
「たね」は消雪のみならず、豪雪地帯の文化でもあり、景観の一部をなす大切な要素ではないかという観点からも、部局横断的に研究を進めてほしいものと考える。そして、「たね」の保存のみではなく、豪雪地帯をはじめ、過疎地域や農山村における集落の保全・維持のための課題について、関係市町村と研究する価値は大いにあると思うが、如何か。総務部長に伺いたい。
A(総務部長)
昨年11月、地域づくり団体や市町村、県職員が集う「やまびこフォーラム2013」を飯山市で開催。議員もご出席いただいた。その際、現場を見ながら厳しい自然条件の反面、そこにしかない豪雪地特有の、例えば「たね」などの美しい自然や景観、個性豊な伝統文化を活かしながら取組む地域づくりの重要性を学んだ。
地域づくりを担う市町村や現場の声を聞きながら、一緒に集落の維持・活性化を研究することは、県としても必要なことと認識しており、今年度から「集落“再熱”実施モデル地区支援事業」を実施している。この事業の例として、山ノ内町の須賀川地区では、「雪室を活用した野菜のブランド化」などを研究しており、豪雪地帯の集落の維持・活性化のモデルとなるよう、地元住民や山ノ内町と一緒に取り組んでいる。
北信地方事務所管内では、県と市町村が重点的に取組む施策等を内容とする「地域ビジョン」の策定のため、「地域戦略会議」において雪国の暮らしを支える施策等を市町村と共に研究している。また、「しあわせ信州創造プラン」では、農山村の活性化を「誇りある暮らし実現プロジェクト」に位置づけ、重点的に取組むこととしている。「地方事務所長の施策提案」や「職員による政策研究」等、様々な機会を捉えて市町村と一緒になって取組んでいく所存である。
◎ 公教育を補完している学校法人等への支援について
Q 「平成17年4月より発達障害者支援法に基づいた取り組みがスタートしている。同法によると、これまで制度の谷間に置かれていて、必要な支援が届きにくい状態となっていた「発達障がい」を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障がい、学習障がい、注意欠陥多動性障がい、その他これに類する脳機能障がいであってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義し、支援の対象となった。
この法律は、「発達障がい」のある人が、生まれてから年を取るまで、それぞれの年齢にあった適切な支援を受けられる体制を整備するとともに、この障がいが広く国民全体に理解されることを目指している。と、厚生労働省が作成したパンフレットに記載されている。
早いもので、同法に基づいた取り組みがスタートしてから9年になろうとしている。この間、県におかれてはどのような体制を取り、法律に基づきどのように整備してきたのか、そしてその結果をどのように評価されているのか、健康福祉部長に伺いたい。
A(健康福祉部長)
本県では昭和59年に「自閉症療育対策検討委員会」を発足させ、療育やデイケアなどに早くから取組んできた。平成17年の法施行を契機に、精神保健福祉センターに設置していた自閉症自律支援センターを法に基づく発達障害者支援センターに位置付け、早期発見・支援のためのガイドブックの作成、研修会の開催、専門家による実地指導訓練等に取組んできた。
その後、発達障がいの問題が大きく取り上げられるようになってきたことを受け、平成23年に「発達障害者支援のあり方検討会」を設け、中長期的な視点に立ち、教育や就労等も含む幅広い分野における支援のあるべき姿を報告書としてまとめていただき、現在その具現化に取組んでいる。
発達障がいのある方やその家族に対して適切に支援するためには、関係者が年代や分野を越えて連携するとともに、身近な立場の方々や社会の理解も不可欠であり、これまでの取り組みを通じて、そうした体制の整備が進んできたものと認識しているが、一方で、直接支援に当たっている関係者の対応が不充分である等の課題もあり、より一層の取り組みが求められていると考えている。
ところで、教育委員会の行った「平成25年度 発達障害に関する実態調査結果について」によれば、「診断のある発達障害の児童・生徒の人数が年々増加している。」と分析している。確かに発達障害の児童・生徒数は、平成22年度の調査では3,782人で対全体比2.05%であったものが、平成25年度では5,093人で全体比2.88%とかなり増加している。
これに対し、「現状の取組について」においては「地域連携の充実」と「校内支援体制の整備・充実」に取り組んでいる旨の説明がなされている。
ここに掲げられた取り組みを一層強化していただくことと、その過程で更に効果的方策が考えられれば、積極的に取り入れていただきたいものと思う。発達障がいへの支援は、各ライフステージにおける支援と切れ目のない支援が肝要と考えている。が、県の組織によれば保育園は健康福祉部、幼稚園については、私立は総務部、公立は教育委員会が担当している。
福祉・医療・教育と生まれてから成人するまで一貫して支援することが必要である。
・ 保育園や幼稚園から小学校への移行の際、切れ目なく支援は行われているのか。
A(教育長)
幼稚園、保育所に在籍する、発達障がいのあるお子さんの就学に関しては、乳幼児健診等の情報や保護者からの相談、幼稚園、保育所の依頼に応じて、市町村教育委員会におかれている就学相談委員会の相談員等が幼稚園、保育所を訪問して支援状況の確認を行っている。その情報を基に、就学相談員会において適切な就学相談が為され、市町村教育委員会が就学先を決定する仕組みとなっている。
その際、小学校などの就学先に対し、その子の就学に関する情報を適切に伝えている。障がいのある幼児が入学する際には、保育士等が早期から保護者と懇談を重ねて生活の様子や支援情報等を記録した内容を学校へ申し送るほか、各小学校で開催される幼稚園、保育所、小学校の連絡会において、就学後の様子や支援状況などの確認を行うなど、入学後の支援に役立てている。
今後とも、保護者をはじめ幼稚園、保育所や学校関係者がきめ細かな連携を図り、継続性のある一貫した支援ができるよう努めていきたい。
・3年前には、中学校の特別支援学級に在籍する生徒の6割が高等学校に進学していると聞いたが、その実態はどのようなものか。
A(教育長)
中学校の特別支援学級卒業生の高等学校へ進学する割合は、県の調査では、平成22年度 58.1%、304人であったが、平成24年度では64.8%、380人となっている。これは、中学校において発達障がいにより、自閉症・情緒障がいの特別支援学級に在籍する生徒が増加していることによるものと認識している。
これらの生徒の高等学校への進学にあたっては、円滑な移行を目指し、中学校の特別支援教育コーディネーターや進路担当教員らがまとめた支援情報について、高等学校へ引継ぎを行うとともに、高等学校入学後も中学校と高等学校の連絡会により生徒の情報交換や支援状況の確認を行い、高等学校での支援の充実を図っている。
・就職を希望する生徒達にとっても不安にならぬよう、企業と高校との連携が更に重要である。どのような状況か。
A(教育長)
平成24年度に公立高等学校を卒業した発達障がいの診断を受けている生徒146名の進路状況は、就職者が39名、進学者が81名、作業所等の福祉的就労が6名、その他が20名となっている。
就職を希望する生徒の支援については、各校の進路指導担当教員などが、生徒の希望をもとに地元の企業を訪問し、個々の生徒の職業適性に合った求人の開拓に努めている。
また、企業の理解と協力を得ながら、事前の職場見学や就業体験を実施することにより、生徒が自らの職業適性についての理解を深め、職業選択の基準となる勤労観・職業観を身につけられるよう支援している。
さらに、高等学校の特別支援教育に係る研究校を指定し、専門性を有する支援専門員を外部から派遣することなどにより、適切な就労支援について研究を行い、その成果の全県的な普及に努めている。
今後とも発達障がいのある生徒が、希望する就労を実現できるよう、企業をはじめ関係機関との一層の連携を図っていきたい。
・大学入試や入学後、授業を受ける際にも配慮が必要であるが、高校における進路相談において、きちんとしたケアがされているのか。
A(教育長)
平成24年度に高等学校を卒業した発達障がいの診断を受けている生徒のうち、81名が進学している。
そのうち4年制大学に30名、短期大学に7名、専門学校に44名が進学している。進学の場合も、将来の就職への見通しを持った学校選択が必要であり、発達障がいのある生徒に対しては、自己理解や職業理解を含め、きめ細かな進路指導を学校選択の時期まで行っている。
生徒の適切な学校選択を支援するために、各校の進路指導担当教員が志望学校の入学試験や入学後の支援に関する情報を収集し、生徒・保護者に提供している。
さらに、入学試験における受験生への特別措置の申請や入学後の授業・学校生活への支援については、高等学校で行ってきた配慮についての情報を、進学先にも適切に引き継いでいくことが重要であり、この点からも、高等学校における発達障がいのある生徒への支援体制の充実に努めていきたい。
Q 「平成26年4月1日長野翔和学園が開校する。翔和学園は生きていく気力を育てます。」これは、NPO法人翔和学園のパンフレットから引用させていただいた。
同学園の開設場所は、長野市若里の「長野県社会福祉総合センター1階」で開設コースは、高校卒業相当年齢以上で、発達障がい等により人間関係やコミュニケーションに不安のある者を対象とする本科コースと、高校を中退、あるいは不登校のために居場所・学びの場が必要な若者等を対象とする時間制コースで、両コースあわせ30名が募集定員である。
県においては、学びの場所開設のため、社会福祉総合センター1階の施設改修費と必要な備品の準備のための経費として、昨年9月議会に365万2千円の補正予算案を提出し、議会もこれを了として議決をし、私も発達障害を持つ若者を受け入れ、指導・支援を行うことのできる専門的なノウハウを有する教育機関を県内に誘致することは誠に良いことと考えている。
そこで、今後ますます、県内の発達障がい支援を進めるためにという観点からいくつか伺う。
まず最初に、開設場所の長野県社会福祉総合センター1階は有償貸与となるか、無償なのか。どのような形で翔和学園が使用することになるのか。
A(企画部長)
長野翔和学園が開設される長野県社会福祉総合センターは、県の行政財産であり、貸付方法は自治法に基づく行政財産の使用許可による貸付となる。
使用料は、長野県の財産に関する条例第13条の「公共的団体において、公益事業の用に供するために使用させるとき」に該当するものとして10分の10の減免になり無償貸与となる予定。
今回の募集人員は2つのコースをあわせて30名とのことだが、将来的には募集人員をどのくらいにしてほしいとお考えか。そして、そのために今後どのような支援を考えているのか。
A(企画部長)
長野翔和学園は、発達障がい等により困難を抱えている子ども等を対象としており、生徒一人ひとりに対して手厚い個別支援を行うため、定員は高校卒業年齢以上を対象の「本科コース」と高校生相当年齢を対象の「時間制コース」合計で30名。将来的な募集人員というお尋ねであるが、まずは、長野翔和学園が地域の理解を得ながら、しっかりと根付き運営されるよう支援することが必要と考える。
そのため、県だけでなく、県民や企業等の皆さんにも発達障がい等の子供たちへの理解を得ながら、可能な分野で支援や協力をお願いし、地域を挙げて長野翔和学園を応援してもらう官民協働プロジェクトを実施中である。
また、2月17日から3月28日までの間、入学願書を提出された方や入学を検討されている方々を対象とした体験ウィンタースクールが開講されているが、その状況は如何か。
A(企画部長)
2月17日から3月28日までの週3回、県社会福祉総合センター等を利用して、入学予定者及び入学を検討している方たちを対象にウィンタースクールを開催中。2月末までに延べ11名が受講しており、実際に体験することで、入学に向けてスムーズな準備ができると考えている。
発達障がいに対する専門的・先進的なノウハウを持つ翔和学園を長野に誘致したということは、単に毎年30名の若者達の発達支援を専門的に行っていただくことのみでなく、この他に県内の学校等と連携し研究、研修等を通じ専門的なノウハウの提供、共有により、県内の発達障がいに関する教育の充実に資することも可能と思うが、どのようなことをお考えか。
また、翔和学園の協力はいただける見込みはあるのか。
A(企画部長)
長野翔和学園を誘致することで、受け入れる子どもたちの支援にとどまらず、今後、県教育委員会や私立高校との連携も積極的に進めて、発達支援の教育のノウハウを共有していく予定。
このため、県教育委員会では、発達障がい等の子どもたちへの教育支援の向上を図るため、県内の教員研修会に翔和学園から講師を派遣してもらうこと等を検討中である。翔和学園としても積極的に協力していく意向である。
Q 県内には翔和学園だけでなく、不登校はじめ困難を抱えている子ども達を積極的に受け入れ、社会に出ても自立できるよう、可能な限り技術や知識を習得させる教育を私立の高等専修学校や地域のNPOが、多くの方々に支えられ、努力を重ね、運営し、子ども達を就労や進学へとつないでいる。今後も爆発的に増加するであろう、これらの子ども達に対し、今から出来うる限りの方策を講じなければ、本人はもちろん家族だけでなく、結果として社会全体が大きな不安を抱えることになるのではないか。
平成24年度 年間一人あたりの長野県学校種別補助金は、公立高校全日制で106万435円、私立高等学校が31万454円、高等専修学校が4万6,440円と、桁が違う。
平成25年2月20日付県からの学校法人補助金変更内示通知文の一般的事項によれば、
「(1)私立学校は、本来建学の精神に基づき特色ある教育と自主的な経営を行うものであるが、この補助金は、その公共性にかんがみ交付するものであり(後略)」
「(2)この補助金は、学校の給与費を中心とする経常的な運営費に対して交付するものである(後略)」とある。
困難を抱える子ども達を積極的に受け入れている高等専修学校は、将にその公共性大である。
過日、豊野高等専修学校の山岸建文学校長が県にお願いに上がったが、高等専修学校の補助金は、せめて少なくとも私立高等学校と同額にして頂けないものか、また、発達障がい等、困難を抱えている生徒を多く受け入れ支援している私立の学校法人に対しても、現在ある私学運営費の助成制度を拡充・充実させてしっかりと応援していただきたいと考えるが、総務部長に伺いたい。
A(総務部長)
豊野高等専修学校は、積極的に不登校傾向の生徒や、発達障がいを持つ生徒を受け入れていること、さらに、卒業生には大学入学資格が付与され、高等学校ではないものの、高等学校の代替機能的な役割を担っていると承知している。
来年度予算案においては、豊野高等専修学校のように高等学校の代替機能的な役割をしている専修学校の高等課程に通う生徒についても、低所得世帯に対する支援を目的とした授業料等負担軽減補助制度を適用することとし、所用の予算措置を講じ、支援の充実を図っているところである。
私立学校の経常費補助金は、学校種ごとに国の財源措置等を勘案しながら予算化しているところであるが、国の財源措置の違いもあって、高等学校の全日制と高等専修学校とでは、一人当たり補助額に開きがあること、あるいは、障がいのある生徒に対する支援は幼稚園から高校までの学校に限られているのも事実。
発達障がいを持つ生徒の学びの場、ひきこもりや不登校経験のある生徒の再チャレンジの場の充実は県として重要な課題として考えているところであり、公立と私立、高校と高等専修学校、それぞれの役割や特性を踏まえ、また学校側の実情や要望を丁寧に伺いながら、支援のあり方について検討していきたい。
県においては平成23年度に「発達障がい者支援のあり方検討会」を設置され、委員13名により3回にわたり現行のシステムの課題を改めて確認し、新しい支援のあり方を検討していただいた。
「まとめ」では、現在の課題として
- 全般的分野の専門家の配置と組織の設置
- 関係機関の情報の共有
- 専門的な支援の充実
- 周囲の理解の充実
- 発達障がい診療の整備
の5点が対応すべき課題として挙げられたが、現在のシステムには位置づけがなく、新しい視点からの対応が必要になるものとして「全般的分野の専門家の配置と組織の設置」について重点的に検討し、その他の課題については、現在のシステムでも対応されているものの、その量や質が不十分であると感じられていて、早急に対応の実行が必要になっている。
また、今後の進め方について、既存の取り組みを生かしてすぐに取り組めるものは来年度の事業予算に取り組むべきという意見や、発達障がい者支援対策協議会に引き継いでさらに具体化のために検討すべきと指摘された。これらの指摘は、その後の施策においてどのように生かされ実施されてきたのか健康福祉部長に伺いたい。
A(健康福祉部長)
この検討会の報告書では5つの課題について、対応時期を早期、数年以内、数年以降の3つに分け、充分な準備の基で確実に実施に移すこととしている。県では、平成24年度、発達障害者支援対策協議会に4つの部会を設け、各委員に実務担当者も交えて具体的な準備等について検討を行い、可能なものは直ちに、また、予算を伴うものは平成25年度から実施するなど、概ねこの報告書に沿ってその具現化を図ってきた。
一例を挙げると、全般的な分野の専門家である発達障害サポートマネージャーについて、平成24年度は養成や配置に関する詳細を検討して候補者を養成し、平成25年度予算により4圏域に配置するとともに、平成26年度には、8圏域に増やすよう予算をお願いしている。
平成19年4月から学校教育法の一部が改正され、特別支援教育が高等学校においても制度化された。これは公立高校のみならず、私立高校等も含めて推進していくものであると考える。先ほど、中学校の特別支援学級に在籍する生徒の約6割が高等学校に進学していると聞いたが、公立高校以外の私立やその他専修学校等に進路選択した子ども達の動向をどのように把握されているのか、教育長に伺いたい。
A(教育長)
先ほど、平成24年度では64.8%、380人の生徒が高等学校へ進学していると申し上げた。その内訳としては、41.8%、245人が公立へ、23%、135人が私立高校への進学となっている。
また、高等学校以外の進路選択として、2.7%、16人の生徒が各種学校・高等専修学校へ進学している。特別支援学級生徒が私立高校や専修高等学校等へ進学を希望する際には、私立高校や専修学校の体験入学や教育相談を積極的に活用するように指導し、適切な進路選択がなされるよう支援しているほか、進学後も私立高校や専修学校の教員と、中学校の教員が生徒の様子や支援情報について情報交換を行う場を設けるよう指導しているところであり、今後とも継続性のある一貫した支援ができるよう努めていく。
「子どもが突発的な出来事に対応できるかわからないから、交通機関を使って遠くへ一人で通わせるには、不安がある。」これは、発達障がいをもつ生徒のお母さんの言葉である。統廃合が進み、高校が遠くなってしまう等、地域により様々な弊害が生じている。このようななか、公立高校や養護学校だけでは、彼らを網羅できる状況にはなっていないことは明らかである。
平成26年度予算案を見ると、サポートマネージャーの増員はじめ、発達障がいに対する支援事業が拡大されており、高く評価する。各圏域へのコーディネーターを配置する相談体制の整備、就労支援、そして農業分野での就労促進等々。色々な角度からの支援を図るための予算が準備されているが、もう一つ、是非付け加えてほしいものが、先ほど申し上げた学校法人とともにNPOへの財政支援である。
NPO法人を対象として、私学運営費の助成制度の拡充はなかなか困難かとは思うが、こうしたNPO法人が行っている教育的な支援は、まさに公教育の補完として行われていることである。本来なら県が直接行うべき内容の支援である。もし、こうしたNPO法人が不登校や発達障がい等様々な困難を抱えている生徒を支援しなければ、生徒たちは居場所を失ってしまう。
知事は、「誰にも居場所と出番がある社会」を創造する、とこれまで何回も言われてきた。
県内のひきこもりの若者の数は推計値ですが3,300人と聞いている。また、毎年、公立・私立の高等学校を中途退学する者が700人近いとも聞いている。こうした前途ある若者たちが、引きこもってしまうか、社会との接点を再び持ち、就職して自立していくかは、子どもたち自身やご家族にとってはもちろんのことだが、県の財政面から見ても大きな違いが出る。
学校生活に馴染めない青少年に学びの場を提供し、その保護者の支援にも取り組んでいるNPO法人が、中高・飯水を中心に頑張っている。県内各地のこのようなNPO法人が、地域の実情に応じた支援に取り組んでいただいていることは極めて重要である。
1月22日に知事には「県政ティーミーティング」において、NPO法人「ぱーむ ぼいす」飯山教室にお越しいただき意見交換された。その際の感想を伺いたい。
A(知事)
当日は大変な雪の中、宮本議員にもご参加を頂き感謝申し上げる。これまでも、子ども達が様々な個性を持っている中で、多様な学びの場とか、多様な居場所が必要だと常々感じていた。「ぱーむぼいす」の理事、保護者の皆さんとの意見交換を通じて、改めてその思いを強くした。
「ぱーむぼいす」では、困難を抱えた子ども達だけでなく、保護者の思いも受け止める活動をしており、また、子ども達に対しては、学習支援とともに太陽の下での農作業を通じて生きる力を身につける支援も行っている。関係の皆さんの子ども達への温かな眼差しと教育への強い情熱を感じた。
不登校の子どもや困難を抱えている子どもが増加する中で「ぱーむぼいす」のような団体は、子ども達にとってかけがえのない学びの場であり、貴重な居場所だと考えている。このような取り組みは、まさに公教育を補完する必要かつ先進的な取り組みとして高く評価する。こうした活動がますます活発になることを望んでいる。こうした居場所に、県としてどう関わるべきか、向き合う時期に来ているのではないかと考えている。一連の宮本議員の発言をしっかり受け止めさせていただきたい。そういった中で支援のあり方を検討していく。
地域に根差し、地域の特性を十分承知している彼らと協同して支援に当たることは、社会と直接向き合うこととなり始めた高校生世代の若者に対する有効な支援になると考える。今、先行投資をすることで確実に県の将来的な財政負担は少なくなる。こうしたNPO法人をしっかりと応援していく必要があると考える。
新年度において、教育支援等を行っているNPO法人への助成のあり方を是非検討いただきたいと知事に強く要望する。
◎ 教育現場におけるスキースポーツ振興について
ロシア ソチオリンピックで県選出の選手達が大活躍した。なかでも、白馬村出身 渡部暁斗選手が、ノルディックスキー複合で銀メダル、飯山市出身 竹内 択選手がジャンプ団体で銅メダルに輝いた。ご本人はもとより、ご家族、そして支え続けてきた多くの皆様に心よりお祝い申し上げる。知事からは、両選手にはスポーツ栄誉賞も含めて県として表彰することに前向きの発言もあった。
この快挙がスキー選手を目指す子ども達に夢・希望・感動を与えたことは大きな成果であり、渡部、竹内に続くよう、より一層練習に励んでほしいと思う。スキーに限らず、スポーツで勝利する者には共通したものがある。それは小さい頃に抱いた夢をあきらめず、目標に向かって日々精進してきたことだ。
竹内選手は幼い頃、地元にある飯山シャンツェを豪快に舞い降りる先輩ジャンパーの勇姿に憧れ、「自分は将来必ずオリンピック選手になる」と固く心に誓ったそうである。将に、その目標に向かって努力を重ね、夢を叶えたのである。様々な苦難があっても目標を持ち続け、それを乗り越え努力すれば、夢は必ず叶うものだ。万が一叶わなくとも、限りなくその目標に近づくことはできる。子ども達にもその事を、スキースポーツを通じて、感じてもらえればと思う。
雪国ならではのこの信州で、子ども達が低学年よりスキーに親しむことは、将来の大きな夢につながる。教育長におかれては、教育現場が子ども達にとって将来の夢を持つきっかけの場所となるよう、そして「スキー王国ながの」の名に恥じぬよう、スキースポーツの振興を今後どのように施策に反映していくおつもりか、伺いたい。
A(教育長)
今回のソチオリンピックにおける渡部暁斗選手、竹内択選手をはじめ本県関係選手の活躍は、県内の子ども達に大きな夢と希望を与え、冬季スポーツへの関心と参加意欲を高めてくれたと考えている。これまで、教育委員会では、第2次長野県教育振興基本計画等を「信州教育スタンダード」として位置付け、その推進に取り組み、現在、県内小学校の96%にあたる356校でスキー教室を実施している。
また、関係団体の取り組みとして、長野県索道事業者協議会等で構成する「スノーリゾート信州プロモーション委員会」からは県内すべての小学生にリフト優待割引券を配布いただいたほか、「北信州スノースポーツ活性化協議会」では、教員や保護者向けのスキー指導用DVDを作成し、地元の学校等で活用されている。
今後も引き続き、スキーの体験学習等が活発に行われるよう取り組みを進める。特に「北信州スノースポーツ活性化協議会」が作成したスキー指導用DVDは、スキーの楽しさを広げるため有効な手段と思われるため、今後、同協議会と協力しながら、県内小学校への配布について検討していく。
さて、今年度をもって一線を退かれる理事者もおられるが、万感胸に迫るものがあろうかと推察する。特に、教育問題が取り沙汰される中、本県史上初めて文部科学省からの起用となった伊藤学司教育長を、現場の教員を代表する立場として支えられた笠原千俊教育次長におかれては、その思いも一入と察する。
是非、この場にて、後に続く教員たちへ託す想いを「贈る言葉」として述べていただければ幸いである。
A(教育次長)
県の教育をめぐっては、現在も多くの重い課題があるが、それらに関わり、後に続く教員に託す思いを語らせていただくということから、教員の資質向上について述べさせていただく。
ある先輩が言われた言葉である。「教員の命 教材研究」。教材研究は授業に向け、地域を、あるいは時には世界を視野に先輩教員に学び、同僚の教員とともに行う日々の取り組みである。私は、教員が日々誠実に、こうした子どものための地道な取り組みの充実を図っていくことによってこそ、教員としての自覚の深まりや資質の向上が確かになり、子ども、保護者、地域、県民の皆様の信頼を得ていくことができると思っている。
先日、若い教員からもらった手紙に「先生方に学びながら、共に授業づくりに励んでいきたい」と書かれていた。一人ひとりの教員が子どものために学び、信頼される学校を作る、そういう気概をもって日々の教育活動と研修に励み、県民の皆様の期待に応えて欲しいと願っている。教育環境の改善など県議会の皆様よりいただいたご支援に心より感謝申し上げる。ありがとうございました。