平成19年12月定例会一般質問をPDFで見る[260KB:別窓で開きます]

監査報告について

Q.平成19 年度定期監査の結果に関する第1 回の報告の中で、契約事務について1 件の指摘事項がなされている。その指摘は決算特別委員会でも審査対象となったが、平成18 年6月に行われた18台のテレビ電話購入に関する契約に関してである。そこで購入に至る経過・契約実態及び使途の内容に関して総務部長に伺いたい。
又、監査報告では「法令等に反した不適正な事務処理が行われていた」とされているが、当該事項に関してどのような議論が交わされたのか、結果的にどういった行為に問題があったのかについて代表監査委員に伺いしたい。

A.テレビ電話は、平成18年6月から7月に、知事室、経営戦略局、危機管理局等県庁内5台、各地方事務所他出先機関13台、計18台を1台当たり月額2,0 68 円の48回払いで購入したもの。他にBフレッツやフレッツADSL等NTTの回線使用料がかかる。
購入経過については、具体的な検討状況はわからない。導入半年経過後、各機関に使用状況、今後の希望について調査。結果危機管理局以外希望がなかったので、平成19年2月末に危機管理局分を除く17 台分の契約を解除し、割賦払い分の残額124万円余を支払った。

A.本年7月に18年度執行分の監査を行う過程で明らかに。監査委員会内部の議論としては、この件に関しては「すでに契約が解除され、是正措置が取られている」ことを考慮するが、明らかに法令違反、効率性、計画性を欠いているため、事実は事実として指摘する。
問題点は、3 点。

  1. 4 年間48 回払いの割賦購入であるが、割賦購入に必要な翌年度以降の予算措置をとっていないこと。
  2. 購入に当たって、出納機関による事前審査が行われていない、財務規則違反。
  3. ほとんど使用実績がなく、必要性が充分検討されていいなかったのではないか。

これは、前県政下で行われたことではあるが、理事者・職員には重く受け止め事務執行に当たっていただくよう願いたい。

障がい者福祉について

障害者自立支援法では、長期にわたる施設や精神科病院に入所、入院している方の地域生活移行が重点目標としてうたわれている。
長野県においては、西駒郷の地域生活移行を柱として、施策により知的障害者の地域生活移行が全国に先駆け進められており、国からもモデル的な取り組みとして高く評価されているが、一方精神障害の分野では明確な姿が見えてこない。
退院支援事業では平成23 年度末までに230人の退院可能精神障害者の退院を目指しているが、

1.現在までの実績と今後の見通しについて。

A.平成15年に国のモデル事業として佐久保健所で開始。4名が地域生活へ移行。18年までの4年間で、30名。平成19年度は、県内4ブロック、上小、上伊那、松本、長野に退院支援コーディネーターを置き、10月末日までの半年間に23名が地域移行している。平成23年度末までに230人の退院実現を目指していく。

2.本年度4ブロックに1人ずつ「退院支援コーディネーター」を配置しているが、有効に機能し、取り組みの成果が上がっているのか? 又、課題があるとすれば、どのようなことがあるのか?

A.10月末日までの半年間に23名が地域移行している。退院支援コーディネーターの成果は着実に上がっているが、県内で差がある。コーディネーターが、カバーしなければならない地域が広すぎるため、対応が追いつかない傾向にある。県内10 圏域への配置が課題。今後も有効に活用していきたい。

3.この人員で全県にわたるきめ細かな対応ができるとは思えないが、今後増員する考えは?

A.国も来年度退院支援施策の充実を検討している。国の動きを注視しながら、県下全域をカバーできるよう増員に努める。

4.精神障害者の退院促進は、知的障害者の地域生活移行と比較し、機運を盛り上げていく取り組みが弱いように感じられるが、その点をどのように受け止めているか。

A.地域・医療・保健・福祉の連携が重要。ネットワークの構築を目指す。地域のグループホームを活用し、患者本人、家族、関係者への相談支援体制の充実を図る。

Q.近年大きな話題となっている自閉症、注意欠陥、多動性障害等、いわゆる発達障害者の実態をどのように把握しているのか、衛生部長にまず伺いたい

A.市町村での1歳6ヶ月児検診、3歳児検診での早期発見・早期支援に努めている。注意欠陥、多動性障害等、多くが小学校で発見されるものなど、障がいの種別によって発見の時期が異なるため、有病率については確定数値がない。

Q.発達障害のお子さんを持つ保護者によると、乳幼児期、保育園・幼稚園から学校にかけての就学相談体制に関して、連携の不十分から子供が不安定になったり、保育園等の対応が上手く学校に引き継がれていかないために、学校現場で戸惑いがあるなど、いわゆる保健・福祉・教育等の相互連携がうまくいっていないのではないかとの危惧を感じておられるようだ。これらの課題について、それぞれどのように認識されておられるか、衛生部長、社会部長、教育長にお伺いしたい。あわせて、支援を必要とする生徒達をカバーすることが、健常生徒にとっても共生社会を目指すという観点から、非常に大切なことである。高校再編の中で特別支援教育のあり方がどのように検討されているのか、又高校入試の際どのような配慮がなされているのか? 教育長に伺いたい。

A.衛生: 就学時における関係者の連携は重要と認識している。関与する方の専門性を高めるため、専門研修の実施、講師の派遣、パンフレットの作成等を行っている。発達障がい者支援体制整備検討委員会で県内の先進的な市町村での早期発見・早期支援モデルを検討中。20 年度を目途に示したい。
社会: 発達障がい児がそれぞれの成長段階に応じて能力や社会性を獲得できるよう、児童デイサービスや通所施設を活用し、日常生活の基本動作の訓練等を提供している。県内10 圏域の障害者支援センターに配置された療育コーディネーターを保育園、学校に派遣し、専門的な相談に応じている。保健・医療・福祉の連携に努めていく。
教育: 就学期における保健・福祉機関との連携は課題。支援シートの充実と活用を図りながら、保健・福祉機関のもっている情報がスムーズに学校に引き継げるよう取り組んでいく。小中学校に比べ高校の特別支援教育の充実は急務である。再編計画に盛り込んでいきたい。入学選抜は中学からの申請に基づき、個々の事例ごとに特別措置をしている。入試の公平性を踏まえ検討していく。

Q.生まれてから現在まで、生涯のライフステージを通じての情報を蓄積し、支援機関への伝達をスムーズに行うため、県内の療育関係者によって「個別支援手帳」を交付する取り組みがされていると聞いているが、長野県として、将来発行するような計画はあるのか?
一方、本県においては、知的障害者に対して一貫した指導・相談を行い各種の援助措置を受けやすくするために「療育手帳」を交付している。これは、IQ75以下の知的障害者に対して交付されるものだが、IQの高い自閉症や発達障害児はこの対象とならない。又、「身体」や「精神」は法律的にキチンと「手帳」について定義付けられているが、「知的障害」に対する「療育手帳」制度は、昭和48年厚生事務次官通達により導入されたものであり、「知的障害者」が法律で定義されていないことや「療育手帳」の具体的交付基準は実施主体である都道府県や政令指定都市で統一されていない。 自閉症等への対策が停滞しないためにも、この「療育手帳」の交付範囲を拡大すべきかと思うが、社会部長に伺いたい。

A.県としては、県内療育関係者の活動に対して助言等のを行っていく。昨年より、知的障がいを伴わない自閉症の方々も障害者自立支援法により、医師の診断によりサービス利用が可能になった。県としては療育手帳の交付範囲を広げるのでなく、サービス利用について周知等支援していきたい。

Q.障害が軽度である故に、福祉の硲に埋もれてしまっている彼らに対して一貫した支援体制の構築については、いわゆる「たらいまわし」にならぬよう、部局間の連携の一層の充実を図っていくとともに、2年後に再編されるであろう社会・衛生両部の統合に際しては、これらの課題・現状をしっかりと見据えたうえで組織づくりが為されるよう強く要望する。

長野県森林づくり県民税と木材利用について

Q:森林税の使途として、今回里山地域の間伐を進めると言うのも、遅きに失した感はあるが、防災機能の高い森づくりにより県民の安心安全、又、農業用水を確保する上でも必要であると考える。
また、中山間地域である里山では老齢化比率が限界まで高まり、その再生は地方の抱える大きな課題でもある。団塊世代の回帰や都会との交流による里山の再生ということも取りざたされているが、本当の意味での里山の再生は林業の再生によるしかありえないといっても過言ではないと考える。
人工林では31~ 50年生の木が大半を占め、木の樹高成長が60年生までであることから、その間に間伐を進め、枝葉の繁茂した木々が陽光を浴び、幹が太く根も深く広く生長できる条件を与えないと、次世代に不良資産とも言える森を引き継ぐこととなり、そういう意味で「先送りできない1 0 年」と言うことは理解できることである。
戦後復興から高度成長を経てきた日本の時代背景の中で、手間暇かかる森林が取り残されてきたという点にも思いをめぐらす必要はあると思うが、個人所有面積が零細で、不在村者も多いため今まで間伐を後回しにし、荒れるに任せてきたのは林業行政の失敗であるという指摘に対し反省することも多くあるといえる。
林業の再生のためには、山から安定的に木材が加工施設に供給され、広くあまねく流通し、山側へ資金が再投資される自律的な循環が機能するようにならなければならない。
森林税導入の根拠でもある、平成27年度までに25万ヘクタールの間伐をするというアクションプランに基づいて、間伐を実行するとともに、間伐材の搬出を促進していく必要があるものと考えるが、間伐材の搬出率の実態は如何か。林務部長に伺いたい。

A.平成16年から18年度、19.3% から22.1% 、約2割である。平成11年から5年間平均で78,0 00m3 、16年から3年間で42% 増の110,000m3

Q.せっかく6億8 ,000万円の税金を投入するのであるから、間伐が推進されるとともに、林業が活性化する可能性が見えてこなければならない。
循環型の林業が自律的に成長するためには木材が安定的に出材されることが前提条件であることは言うまでもない。間伐材の搬出を促進する体制を早急に構築しなければ、文字通り森林は切り捨て間伐の山となってしまう。
こうしたことから、アクションプラン最終年に向けて、間伐材の搬出率をどのように向上させていく計画か、林務部長に伺いたい。

A.間伐材の搬出は地形や林内の道路密度、資源の成熟度や樹木の成長度合い等様々な要素に大きく左右される。「森林づくり指針」において、間伐材の搬出面積を平成27年には25% 向上させる計画。団地化、道路、システム、流通、施業プランナナーの養成などを行い集中的、効率的に行えるよう努める。

Q.ともすれば、税額の500円が妥当であるか、否か? 又、間伐面積が話題となっているが、言うなれば成木は間伐材の犠牲の上に成り立っているのであり、その行く末まで責任をもつのが、伐採する者の義務であると考える。
今回里山の森林整備が対象なので、生活道路からも近く出材も容易であるところが多いはずである。故に100% の出材も可能で、木材から収入が得られれば間伐に対する山林所有者の意識も高まり、加工工場から県民が広く県産材を入手できるようになり、それによりいくばくかの恩恵があれば、森林税に対する理解も得られると考える。
その意味でも、アクションプラン最終年では少なくとも50% の搬出率にするというようなビジョンを設定し、森林税の5年間で20% から40% まで出材するというような計画を実行する必要があると思う。
さて、林業の自律的な発展に欠かせない木材の利用について、合板需要がない時期県産材は、柱材などを主体とした建築用材向けの利用が主で、外材に比べ径級が小さくコストも高いため建材流通の在庫に置かれず、受注発注にならざるをえなかった。現在でも建築用材に関しては外材主体の流通に乗せられず、山に木があっても県産材がすぐには手に入らない状態である。
住宅部の「信州のふるさとの住まいづくり支援事業」等、県産材消費に様々なご努力はしていただいているが、今のままでは消費量に限界があり、拡大していかないのではないか。
整備が十分でない森から搬出される31~50年生の木は、小径木や曲がり材が多く材価も低いために、山に捨てざるをえず、その結果搬出率が低かったともいえるが、最近そういった木材が合板向けに需要が急拡大し、材価もm3 あたり1万円前後で取引され、山側の採算が取れる水準となっていると聞く。国内生産の合板向け木材の主流であるロシア唐松の丸太の量的確保が難しく、又、国産材合板の製造技術の開発により国産材の使用比率が高まっているのが原因のようである。
今、合板メーカーからは、建築用材にならない、小径木、小曲がり材でB材と呼ばれている、杉に比べ強度のある唐松への需要が急に伸びており、安定的に供給できる体制ができれば、販売数量は急拡大するのが確実になっている。そういう需要に引っ張られ、山側で間伐材の出材意欲が高まっている。需要を無視できず、県森連の原木市場は、入荷を拒絶していたB 材の扱いを今年から解禁し、合板メーカーへ納入している。
信州の木活用課では、17年度から信州カラ松合板の開発を民間と協働で手がけ、18年10月に県産材の認証製品とし、他県に先駆け県内で100%信州カラ松合板を流通させている。信州ふるさとの住まい作り助成金の対象製品にも認定され、外材の合板と市場価格で競合し、需要拡大に努めていると聞いている。
木が若い今、木材の利用は合板向けを主体とするほうが、流通にも乗り、外材と同じ土俵で競争ができるため、木材の需要拡大の牽引力になるはずである。間伐材を使用した構造用の合板は、建築現場において壁や床の下地材として、また、耐震リフォーム時の壁面等への補強材として有効に活用することができる。安価な構造用合板を製造・流通させるシステムづくりが急務である。
既存の木材産業とは製品市場も違い直接の競合はないので、合板工場を長野県に誘致するという発想の転換が必要ではなか? 林務部長に伺いたい。

A.合板工場誘致は海外製品との価格競合があり、相当規模の工場でないと採算面で難しい。相当規模の工場に供給する材料の量的問題もある。県内の年間生産量は良質材も含め26万m3であることから、このような大規模加工施設の誘致は地域木材産業者への大きな打撃となる。慎重に対応する必要がある。

Q.丸太の生産量が長野県の6%未満にあたる、年間1万4,000m3に過ぎない神奈川県では、県産木材供給拠点整備をする際に、県からは土地を提供し、国庫を活用して、供給拠点の事業主体を民間から募集するという、自らの支出を伴わない、極めて戦略的な発想により形を変えた企業誘致を実施している。
こういう大胆な生産体制の構築を長野県でも立案すべきであり、合板の一次生産品の単板だけの生産工場であっても、長野県の林業は活性化するのではないか?
こういった大手の合板工場や集成材工場を核とした川上から川下までを一体的に整備する国の「新生産システム対策推進事業」が秋田県から鹿児島県までの11の地域で平成18年から22年までの5年間の事業としてスタートしている。中核工場は、年間7万m3から30万m3の加工能力を持っている。
ちなみに、長野県の丸太生産量は26万m3である。3年後に全国の市場向けに製品が押し寄せてくる状況に対して、長野県は間伐だけをしていればいいのか? 年間2000m3ほどの製材をしている工場はあっという間に飲み込まれてしまう。林務部では、そういう予測される事態をシュミレーションし、業界団体と緊密に討議し、あるべき体制作りを、どのように協働しようとしているのか? 林務部長に伺いたい。

A.合板用の単板加工は、製材に適さない曲がり材などを有効に利用できることから、1つの可能性がある。採算ベースや原木確保の面から県内既設工場との競合等検討課題もある。関係業界と協議しながら選択肢の一つとして研究していく。大規模、一極集中型の加工施設が稼動している地域では皆伐が行われ、再造林されない放棄地も多いと聞く。本県では間伐材を中心とした効率的原木の安定供給体制の整備と共に、資源量、樹種に応じた地域ごとの地域材加工施設、上小地域ではからまつ、飯田地域ではひのき、長野・北信地域ではスギ等を構想している。品質向上のための乾燥施設の導入など、着手可能な事業から順次整備を進め、地域資源循環型産業である木材産業の振興を図るシステムの構築を進めていく。

Q.木材の競争力を高めるためには、木材の低コスト生産がなされなければならない。どの地域からどの樹種を中心に計画間伐をするのか、そのために何処からどれだけ路網を整備する計画なのか、搬出間伐はどうするのかなどについて、地方事務所林務課や森林整備の事業体と綿密な討議をされ計画をいつまでに作ろうとしているのかが、残念ながら見えてこない。また、低コスト木材輸送システムも大量の丸太を移動させるには必要となるだろう。そのためには、山林に小規模分散している丸太を小型トラックで原木市場に運び手数料を支払い製材工場へ運ぶという費用と時間コストとが並材には負担が大きい現行システムを変える必要がある。
それには伐採現場に近い山元に土場を設置し、山林内に少量分散している丸太を集積、仕分けし、大型トレーラーで製材工場まで直送するというシステムによるコストダウンを図らなければならない。九州などの原木市場では既に旧態依然たる市売りから、安定供給体制に自ら変化しているところもある。こういったシステムの確立に関して、関係団体と十分な意見交換ができているのか? 林務部長に伺いたい。

A.現在、県内丸太の半分は県内市場に出荷されている。平成19年度から並材の生産現場と需要者のマッチングし、直送システムの構築に取り組んでいる。市場関係者、林業関係者と共に検討している。

Q.県民が欲する時に必要な木材が供給される体制作りを看過し、間伐の面積だけをこなすために、森林税を導入するのであれば、いくら「先送りできない10年」であっても森林税の導入に県民の理解を得られるのは難しいと考えざるをえない。
「失われた10年」とならないためにも、森林税の導入によって間伐を進めることと併せて、低コスト林業による安定的な供給体制と競争力のある木材利用体制の確立を目標としなければならない。そのために対応しなければならない課題がたくさんあり、又、そういうものを明らかにして一つ一つ確実に具体的に、つぶしていかなければならないと思うが、林務部長のご所見を伺いたい。

A.長野県森林づくり県民税は、信州の森林づくりアクションプランの実現に向け、県民に新たな財源をお願いしているものである。中期総合計画(案)第二章地域を支える力強い産業づくりの中にもふれている。里山の間伐を進めると共に、合理的な県産材供給体制を整備し、首都圏等への良好な県産材の需要拡大にも力を入れていく。安定的な生産加工体制と競争力のある製品供給体制が総合的に機能することにより、地域資源を生かした林業・木材産業の振興が図られると考えている。

税金を投入して整備した森林からでる間伐材が、出来る限り県民に還元できるよう効率的な施策の展開を強く望むものである。