過疎・中山間・豪雪地域振興策について
Q.去る7 月16 日、発生いたしました中越沖地震。北信地域は震度6~5 強という大変な揺れを感じ、かつて無い被害に見舞われました。
被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げると共に、いち早く現地に来ていただいた村井知事、又、北信地方事務所をはじめとする県職員、更に多くの県内外の皆様にボランティアとして復旧支援にあたっていただき誠にありがとうございます。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。(以下要約)
Q.東海地震を想定し、南信地域の防災対策は強化されているが、今後は日本海側でも十分起こり得るという認識のもと、北信地域にも目を向けた対策が必要ではないか。また、今回の地震発生時の初動体制はどのようなものであったか。に伺いたい。
A (危機管理局長)県内は多数の活断層地帯を有しており、全県を対象とした地震対策が必要。特に、県北部では積雪期に発生した場合は、被害の拡大を招くので今年2月の「地域防災計画」の見直しに、積雪期の被害軽減の予防対
策について盛り込んだ。
中越沖地震は、7月16日(祝)午前10時13分発生。現在、危機管理局は24時間の当直体制をとっている。10時20分に災害本部を設置した。職員の参集状況は、1時間以内に、職員の63%、477人、2時間以内に、97%、735 人が登庁。おおむねスムーズに。更なる防災対策に取り組む。
Q 平成18年12月県会で、豪雪地帯の農山村集落にかかわる用水路の実態調査をお願いしたが、その調査結果、またそれを踏まえて今後どのような取り組みをするのか伺いたい。
更に、昨年12月、国から市町村に対し農業資源調査が行われたと聞くが、どのような目的でこの調査がなされたのか、どのような指導があったのか伺いたい。
A (農政部長)北安曇、大町、北信の地域で調査。雪を融かす用水路は、31水路あり、内29 水路は北信に集まっている。改修が必要な水路は、22水路、10km。整備改修に取り組んでいく。
農水省により平成18年12月現在の、農振農様地域内実態調査が行われた。耕作放棄地は、全国に15万ha、長野県は9,000ha。農水省は市町村に遊休農地解消計画書の作成を指導。県としても遊休農地の発生防止と解消に努ていく。
Q 背丈ほどもある雑草を、炎天下手作業で刈ることは大変な重労働である。
ビーバーを使用した場合の1日当たりの刈り取り面積、そして1haの面積を刈り取る場合、1人で何日かかるか? 又、1ha当たりの労務費はいくらになるのか?
A (農政部長) 10年も放置した農地は、ススキ・笹・潅木等が茂り、草刈は大変な困難を伴う。1日に約18 a、1ha あたり6日程度、1ha 当たり燃料、労賃で92,700 円。
Q ラジコン草刈機は、10年間放置してあった50aの農地に生い茂っている2mを超す雑草を、わずか1.5時間できれいに刈り取ってしまった。この草刈機を使用すれば、1日で2ha、1haを4時間、1haの作業料金は、
70,000 円と、ビーバーを使用した場合に比べ、約11分の1の作業時間で済み、約25%安い作業料金となる。
これにより、「荒廃農地の解消」「手作業によるはくろう病等の振動傷害の予防」「家畜飼料の確保」「里山の緩衝地帯の整備による有害獣対策」等、様々な分野でその効力を発揮できるのではないか。
この機械1台が1千354万5千円と大変高価であり、なかなか民間で購入することは難しい。
東北信に1台、中南信に1台ずつ県で配備し、有料貸与しては如何か?
A (農政部長)機械の維持管理、オペレーターの確保等を考えると(県有は)困難。メーカーで委託作業も請け負っているので、一定の作業量をまとめることで有効に活用できると考えている。農地の借受者等が実施主体となった場合は、遊休農地再生活用総合対策事業の補助対象となる。
(林務部長)獣害対策の緩衝地帯整備に向けては、林地と遊休農地を一体的に整備する必要があるので、農政部と連携して検討していく。
Q 奥信濃の山々が紅葉したかのように赤々となり、異変が起きている。
主にナラ類の大径木が被害に遭っているが、これについて被害状況、原因、対策等について伺いたい。
A (林務部長)ミズナラ、コナラ等の大径木が、カシノナガキクイムシが運ぶナラ菌というカビに感染したもの。全国的には昭和9年に始めて確認されて以来、22府県で発生しており、近年日本海側の県で大きな被害が出ている。
県内は平成16年に信濃町、飯山市で初めて被害を確認。以後、野沢温泉村、栄村、中野市へと被害が拡大。今年は3800本の被害を確認している。
幹内部への薬剤の注入、シートを巻き虫の侵入を防ぐ等、防除については、防災・景観上必要なところから行っている。効果的な防除方法について林業総合センターで研究・開発中である。今後も市町村と連携して対策を講じていく。
Q 下水内郡栄村に平滝地区において、昭和30年4月26日、二俣川上流に突如山崩れが起こり、約2万m3の土砂が1200m下の千曲川に向かって崩れ落ち、国道、鉄道が埋め尽くされた。
国道、JR線が何らかの事情により遮断されたり、大混雑の際にはどうしても迂回路が必要である。栄村箕作から野沢温泉村明石間を一刻も早く開通していただくよう、改めて強く要望し、将来の見通しを伺いたい。
A (土木部長)県道箕作飯山線は国道117号の代替路線として必要。箕作明石間2kmについては、急峻な地形と豪雪のため大規模な構造物が必要。その建設費のみならず、除雪等将来の維持管理費についても十分な検討が必要。昨年、老人福祉施設が開設され117号からの道路も整備された。地域の道路状況が変わる中で、千曲川への橋梁を架け対岸を通過するルートについても改めて比較する必要が出てきた。今年度は千曲川左右岸のルートについて、概略設計の精度を高める調査を続けている。
Q 国土交通省2007年のデータによると、全国62,271 集落のうち、65歳以上の高齢者が50%以上で、冠婚葬祭など社会的共同生活が困難となっているものは、12.6%、7,873 集落。しかも「10年以内に消滅する」とされたのは422集落、「いずれ消滅する」は、2,219 集落あるといわれている。
長野県の81市町村のうち43.2%にあたる35は、過疎地域市町村であり、この地域の高齢化比率も全国の28.7%と比較し、35.4% と一段と高くなっている。
市町村を構成している農山村集落の消滅は、自治体市町村の崩壊、ひいては国家の存亡に関わる重大な問題である。過疎中山間豪雪地域のもつ多面的、公益的機能について、都市部を含めた全県民の理解を得るためにも、島根、岡山、福島、山口県で、すでに施行されている「過疎・中山間地域振興条例」のよう
なものを県として定めるお考えは?
A (総務部長)県内には多数の中山間地域があり、人口の減少、急激な高齢化の進展による地域活力の低下や財政基盤の脆弱性等多くの課題を抱えている。しかし、これらの地域は水源の涵養、国土の保全、自然景観の維持、伝統文化の伝承等県全体にとっても重要な地域である。県としては、地域の特性を活かした振興、機能の維持・再生を重要と考えている。「過疎・中山間振興条例」の制定には至っていないが、「過疎地域の自立促進計画」「食と農業・農村計画」「県中期総合計画」の重点課題と位置付け、市町村、県民と共に、過疎・中山間地域の振興に努めていく。
Q 現在、そのようなお考えは無いようだが、事業推進にあたり、費用対効果のみでの施策の判断は、農山村集落の消滅に、ますます拍車をかけることになるのではないか。社会的共同生活の維持機能が困難となる前に、具体的な施策としての条例制定を願う。
障害者福祉について
Q 平成18 年に障害者自立支援法が施行され、障害者を取り巻く環境も大きく変わりつつある。障害者福祉の全国的な大きな課題として、
- 入所施設から地域生活移行への達成率がわずか1%
- 通所・授産系の施設から就労移行への達成率がわずか1%
- 企業の障害者雇用率が1%程度
の「三つの達成できない1%問題」の解決があるといわれているが、現在の県の達成状況はどのくらいか伺いたい。
A (社会部長)平成18年度では、1については4.0%、2については2.9%、3については1.67%となっている。③の企業の障害者雇用率については、法律で定められている1.8%を下回っているが、全国平均の1.52%より高い。
Q 県では、県単事業としてタイムケア事業を行ってきた。これは在宅での障害者福祉に多大なる貢献をしている事業であるが、国の地域支援事業と重複してきているのではないか。県の役割として、柔軟な考え方に基づき、在宅サービスをうまく後方支援できる事業として、現在のタイムケア事業の位置付けを明確にし、再編すべきではないか。また、今後の取り組み方について、伺いたい。
A (社会部長)県単タイムケア事業は高く評価されている。自立支援法施行に伴い、県単タイムケア事業と類似した地域生活支援事業が制度化されたが、市町村では国の財源措置が極めて不十分であるところから、県単タイムケア事業も合わせて実施している。このため県では、平成19年度予算で対前年比35%アップという大きな事業費を確保し、更なる充実を図った。平成21年度の自立支援法見直しまで、県単タイムケア事業を継続し市町村を補完していく。
Q グループホームの設置に当たっては、グループホーム施設整備事業により、施設整備の拡充を図ってきていただいている。が、自立支援法施行以後、グループホームの運営が厳しい状況にあると新聞等では報道されているが、長野県の実情は如何か。また、障害者プラン後期計画にグループホーム運営の支援をうたっているが、具体的にはどのような支援を考えているのか。
A (社会部長)県では、平成19年5月に県内98事業所の自立支援法施行前と施行後の収支調査を行った。結果、69事業所から回答があり、収支状況が悪くなった42% 29 事業所、良くなった38% 29事業所、変わらない20% 14事業所。今後ともグループホームの設置や重度身体障害者への夜間支援のための補助を引き続き実施していく。
Q 障害者プランでは、一般企業に就職する障害者を2005年度の96人から11年度には320人に増やすという目標値を設定している。長野県の就労支援の取り組みについて現状を。
A ( 社会部長)平成16年度から、10圏域の総合支援センターに配置した支援ワーカーや求人開拓員を配置し、ハローワークや施設と連携をとりながら、就業支援や相談を行ってきた。
320人を達成するため、今年度新たに、企業内で実習するための職場実習設備等整備事業による企業への補助や就労支援ネットワーク事業での障害者雇用のセミナーやネットワーク構築等をはじめた。なお一層、一般就労に結びつくよう努力していく。
Q 今後、就労支援策を推進していく為には、ジョブコーチの充実が不可欠と思われるが、現在、ジョブコーチは県内に何人いて、その活動状況は如何か。又、県としてジョブコーチの育成に取り組む考えは?
A (社会部長)県内には24 名のジョブコーチが配置。ジョブコーチは、国により義務付けられた研修を受ける必要がある。引き続き研修受講を呼びかけていく。
Q 最近新聞等でも報道されているが、地域で暮らす障害者が自覚しないまま、暴力、金銭トラブル、悪質商法等の被害者となるケースが増えてきている。トラブルに巻き込まれないように見守りの強化と共に、巻き込まれたときの社会的弱者の権利を擁護するための方策についてどの様に取り組んでいるか。
A (社会部長)知的障害者を狙った携帯電話の移行契約や手話を用いた聴覚障害者被害に対する詐欺事件等、県内でも発生している。支援相談員、障害者社会参加推進センターの権利擁護推進員等が個別に対応しているのが現状。市町村、消費生活センターと連携して注意喚起及び被害者へ対応している。
Q 全国に先駆け取り組んだ西駒郷の地域への移行プロジェクトが牽引する形で、長野県では施設から地域移行へと比較的スムーズに進んできた。地域で安心して暮らすために「最後の詰め」として、「権利擁護の体制」を、専門家を含めた形で全県的に整備していくことが必要だと考えるが、社会部長のご所見を伺いたい。
A (社会部長)現在は、県や市町村の社会福祉協議会が契約や金銭管理の支援を行っている。権利擁護を積極的に行っているNPO法人や行政書士による成年後見制度が行われている。今後は障害者自立支援法に基づき、10圏域に設置された地域自立支援協議会の中に、権利擁護専門部会の設置を進め、各分野の関係者の連携を深めていく。
Q 地域で暮らすには、支援センターに配置されている専門スタッフのみならず、地域住民とのきめ細かなつながりや警察、公共機関、公共交通機関等の障害者への理解が必要であります。
「住み慣れた地域に暮らし続けられる社会づくりをめざして」より一層の福祉政策の充実をお願いして、すべての質問を終わります。