長野県北部地震・東日本大震災により被災されました皆様に、心よりお見舞い申し上げるとともに、栄村に対して格段のご支援をいただいた知事、また県民各位に、この場をお借りし厚く御礼申し上げます。
長野県北部地震について
3月12日の早朝3時59分、下水内郡栄村を震源とするマグニチュード6.7、最大震度6強の大地震が発生し、隣接する飯山市、野沢温泉村でも一部に被害が発生した。
死者が一人も無かったことは不幸中の幸いだが、これが真冬であったら大変な状況になったと思う。
今回の県の対応は素早く、発生当日12日の午後には和田副知事が、阿部知事は翌13日を始めに4回、また、加藤副知事も栄村に足を運んで、島田村長や村議会はじめ関係者の要望を受け、3月18日から5月31日までの間、村と県との連絡調整のため北信地方事務所在籍の企画幹1名を役場に駐在派遣していただいた。
このことは栄村の復旧・復興に大いに力となったばかりでなく、大災害発生時には、県が素早く手厚い体制をとってもらえるという、市町村関係者にとって大いなる安心を与えていただいたと考えている。
5月14日の「栄村の復興を考える会」の中で、知事は「20世紀の先進地は東京、21世紀の先進地は長野県、そして、栄村。」と発言された。
栄村は豪雪地帯であり、高齢化も進んでいるが、村民の前向きな姿勢と、国・県の積極的な支援があれば必ずや復興する。この知事の言葉に大いに勇気づけられた。
また、復興に向けては、「栄村の復興支援方針」に基づき着実に進めていただいていることに感謝するとともに、引き続き「ふるさと栄村」に安心して住み続けられるよう、最大限の支援をお願いする。
Q 県では、現在までの栄村の復旧・復興の状況をどのように考えておられるのか。また、課題があるとしたらどのようなことと認識されておられるのか。
Q 知事は、4月4日に「豪雪と過疎の村で高齢者が生き生きと暮らせる村のモデルを栄村で実現したい」と発言されているが、具体的にはどのようなことをイメージされておられるか。
栄村有志のある勉強会においては、「災害復興基金の創設を県に要望したい」という意見が出された。
また、5月27日開催された、県町村会臨時総会において、被災地の早期復興、被災者の自立支援などを長期的、安定的に支援するための「震災復興基金の創設」を求めている。これらの考え方の基となったものは、かつて新潟県が設けた「中越大震災復興基金」並びに「中越沖地震復興基金」である。
Q これについては様々な意見があるかとは思うが、長野県としてはどのような評価をされているのか。
本県においても、この取り組みを参考にして、早急に復興基金の創設を行い、栄村の復旧・復興に役立てるとともに、今後県内で大災害が発生した場合にも備えるべきと考えるが、如何か。
6月25日東日本大震災復興構想会議の提言をみると、自由度の高い交付金の仕組みが必要であること、現行制度の隙間をうめて必要な事業に柔軟に対応する基金の設立の検討、が盛り込まれているので、今後国の動向を注視していく
今回の震災は、昭和59年の県西部地震以来の大災害となり、公共土木施設や農業施設の災害はもとより、中条川をはじめとする大規模な山地災害も発生し、仮設住宅の建設といったこれまでの災害では例のない多岐にわたる対応が必要となっているが、豪雪地帯でもあることから降雪前に目途を立てるべきと考える。
Q 農政・林務・建設の各部における復旧工事の今後の予定と、具体的な方針について各部長に伺いたい。
(久米林務部長)今回の地震による林務部関係の被害は、山腹崩壊・雪崩被害など治山関係が、10箇所34億5000万円、林道が9路線、138箇所5720万円。特に中条川については、大規模な山腹崩壊により川道が閉塞しており、下流への土石流被害が懸念されるなど、被害規模が大きく、復旧に高度な技術を要するため4月19日に学識経験者等による検討委員会を設置し、今後の危険予測・警戒避難体制等対策工事の全容について検討を進めている。特に緊急の治山対策を必要とする箇所については、災害関連緊急治山事業等により人家・道路・鉄道等の保全を図る箇所から順次進めている。林道災害については、国の災害査定が8月1日から始まる予定。豪雪地帯であることを考慮し、特に中条川については、緊急の土石流対策については降雪期前までの完了を目指して行く。
(堀内建設部長) 建設部関係の被害箇所・金額は、82箇所 53億7200万円。6月13日から第1次災害査定が始まり、最終の第5次査定も8月5日に終了の予定。国道117号の応急工事は実施済、県道2箇所の通行止めも早期に解消を図っていきたい。生活に影響の大きい箇所から復旧工事を実施し、除雪に支障の無いように努めていく。
復興基金を望む理由としては、地域のサイズに適合し、地域の人々の暮らしに大切なものに係る対策が可能となることにある。
Q 基金創設が困難であるなら、従来の制度の運用を柔軟且つ弾力的に対応していただくよう、知事に要望するが、如何か。
災害時に直ちに出動し、復旧作業に従事してくれるのは、地元の建設業者をおいて他にはなく、残念ながら中小の建設業者の多い長野県においては、公共事業なしには建設業者の育成ができないのが現状である。
かつて、公共事業は全て悪いように言われた時もあったが、必要なものは積極的に行い、平素から建設業者の育成に努めるべきと考えるが、その具体的施策について伺いたい。
地元の建設業者は、地震発生直後から栄村へ応援に入り、土木工事関係では、延べ180日、365人が、電気・水道のライフラインに関しては、延べ390人が対応にあたった。また、住宅関連では県建築士会・県建設労連・日本建築家協会の皆様方に、地震発生の2日後から応急危険度判定、住宅相談、罹災証明の発行、公共施設の被害状況調査等、延べ30日、351名により実施していただいた。
このように地域の実情を熟知した地元業者の活用により、迅速な復旧工事の施工が可能となり、さらに下請け企業や資材などを地元から調達することによって疲弊した地域経済の活性化にもその効果が期待される。今回の災害復旧工事における地元業者の活用について、どのような方策を検討されているのか。
また、災害復旧工事を担当する北信地方事務所、北信建設事務所の組織体制を万全に整えて、既存の事業が滞ることなく災害に対応すべきと考える。早急な復旧・復興のためには多くの技術系職員が必要とされる。
今回の災害に当たっても、5月には村と県で農業用施設の被害調査を実施、また、国の災害査定が6月中旬から8月下旬まで行われる。これらの仕事は通常の業務に上乗せされた業務であり、職員にとっては膨大な事務量となる。
現北信建設事務所管内を例にとると、平成11年頃は中野建設事務所と飯山建設事務所に分かれており、技術系の職員は合わせて42名だったが、現在は31名と聞いている。
組織体制の充実強化についての具体的な方針について伺いたい。また、今回のことを教訓に、適正な人数の技術系職員を計画的に補充・育成していく必要があると思うが、如何か
Q 栄村では、全壊住宅33棟、半壊169棟、一部損壊480棟と大きな被害があった。しかし、高齢化率が45%と、お年寄りの世帯が大半を占める村にあっては、新たな住宅建築の負担等々、困難な課題が多く、簡単には、今まで通りの生活を再建することができない。村では被災者へのアンケート調査を実施し、ニーズの把握を進めているが、村だけの力では限界がある。
栄村の気候風土や景観に合い、高齢者にも馴染み、豪雪にも耐えられる村営住宅を早期に整備し、被災者に一刻も早く安心感を抱いてもらうのが極めて重要と考える。栄村は在来の木造住宅が多く、多くの家庭には薪ストーブが配備されている。こうした地域の特性を活かし、地元の木を使って、地元の大工さん達も参画する形で、栄村モデルとなるような村営住宅を、早期に建設されるよう、県としても支援すべきと考えるが、如何か。
栄村には、森林組合が所有する製材施設があり、今年からは、間伐材の搬出を前提とした森林整備がはじまったと聞いている。さらに、昨年10月には、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、国を挙げて木材の利用を進めるよう大きく舵が切られた。
木材はその生産過程を通じ、多段階で地域の雇用にも貢献すると言われており、せっかくある製材施設であるので、地域の復興材供給の一助となれるよう、また、これを契機に地域の木が地域で活用されるよう、体制づくりを県としても支援すべきと考えるが、如何か。
5月12日の日経新聞に、『政府の地震調査委員会は、東日本地域などで起きる可能性のある地震の発生確率などを見直すと発表した。見直しによって発生確率などが上がれば、地方自治体の防災計画に影響を与えそうだ。』との記事があった。
県では、今後の地震防災対策の基礎資料とすることを目的に、平成12年度から13年度に長野県地震対策基礎調査を行い、建築物、人的、交通施設、ライフライン及び通信施設被害などを予測・想定し、結果を公表している。
これは、市町村地域防災計画の資料として活用されている非常に大切な調査であるが、調査後10年が経過し、今回の地震調査委員会の見解を踏まえると、ここで地震対策基礎調査を再度実施すべきと思うが、強く危機管理部長に要望する。
災害弱者について
今回の東日本大震災に際しても、発達障害のお子さんが避難所で大きな声を出し、居たたまれなくなって家族全員が避難所から離れたという、誠にお気の毒な話をお聞きした。
県では、平成18年度以降全国に先駆け、地域生活移行に取組んできた。長野モデルとして大きな成果をあげ、今では障害をお持ちの方が『地域で暮らし、就労する』ことは、ごく自然となってきている。
また、高齢者においても訪問介護・看護を受けながら地域で暮らすことを選択される方も多くなってきている。
Q 発達障害や、その他の障害をお持ちの方が避難所に入居された場合の対応について、どのようにお考か。
一般的に「災害弱者」は、高齢者・障害や病気をお持ちの方と考えられがちだが、もっと広義に捉え、観光で信州へ来られ遭遇された方等も、「災害弱者」の範疇に入るのではないかと考える。数日前には、上高地で土石流が発生し900人もの方々が足止めされるという状況になった。
県では海外からの観光客誘致に力を注いでおり、効果も徐々にではあるが出始めつつある。しかし、外国人観光客全てが必ずしも日本語が満足に出来るわけではなく、緊急時の意思疎通に大きな問題を抱えていると考える。また、日本人であっても滞在先の詳細な地理に不案内の場合は、特に夜間など誘導してくれる人なしには避難もできない。避難所においては生活習慣の違い等から様々な問題の生じることも考えられる。
平時の「安心・安全」は言うまでもないが、万が一宿泊時に大規模な災害に遭遇した際にも、しっかりとした対応が取れるだけの準備が出来ているということは、今後の観光客の誘致に最低必要な備えと思う。
観光立県として、今後どのようにこのような体制を構築していくお考えか。
千曲川の治水対策について
千曲川の流域面積は長野県の約53%と県の総面積の凡そ半分、そこに70%の県民が生活している。
飯山では幾度となく堤防が決壊し、多くの家屋や農地が流され、また、平成16年・18年には、決壊こそなかったが大きな浸水被害があった。正に飯山の歴史は、千曲川治水の歴史でもある。
この5月29日と30日には、時期はずれの台風2号により増水し、各地で水防警報が出された。増水のピークは30日の明け方だったが、地元消防団は29日の夕方から出動し、千曲川の増水のほかに支川への逆流にも一晩中警戒にあたった。
この時の雨は、飯山市では29日の夜7時頃には止み、連続雨量は約50mm程度で、さほど多いというものではなかったが、上流からの増水により翌朝の8時頃には、氾濫の危険から住民の避難を検討すべき「避難判断水位」に達し、氾濫ぎりぎりの状態となった。県では支川の氾濫に対し、排水ポンプ車を出動させ、被害を未然に食い止めていただいき本当に感謝している。
中野市以北の北信地域の千曲川をみると、国交省で進めている堤防の建設は、順調に進み、これからは、河川の狭窄部の掘削に取り掛かるそうだ。
一方、湯滝橋から下流は県の管理区間になっており、現在、飯山市桑名川で築提工事を行っているが、下流にはまだ無堤地区がある。
下流が未整備で、上流の整備が進めば、下流の氾濫の危険性が高くなる。県と国では、この調整が図られていると思うが、国が行う上流部の立ヶ花、戸狩狭窄部の開削により流量が増えることに対して、飯山市・栄村など下流の住民は大変不安を感じている。
Q この開削は、何を目標として、どのくらいの流量を見込んでいるのか。
立ヶ花狭窄部下流の無堤地区や堤防の高さ・幅の不足している地区の築提、立ヶ花狭窄区間と戸狩狭窄区間の上流への堰上げ解消のため川道掘削を行うとのこと。
また、この流量が増えることに対して、下流の県管理区間では、どのような計画で堤防整備を進めるのか。
狭窄部の掘削で発生する土を堤防の整備に利用すれば、一石二鳥と思うが、如何か。
県としては、当面の目標である6500m3/秒対応だけでなく、国との調整の中で狭窄区間の開削による土砂を有効に活用し、更なる安全度の向上に努めていく。
今回の台風のように、下流では雨が止んでいても、上流からの洪水のために、半日以上にわたり氾濫の危険がつきまとう。千曲川のような大河川を、下流・上流の整備をバランスよく、なおかつ、早急に行うには、県管理区間を国交省による直轄河川とすべきだと思うが、そのことについて建設部長のお考えを伺いたい。
災害に強い県土づくりについて
Q 「河川改修は下流から」という鉄則がある。
県においては、下流域住民の不安を解消するためにも丁寧な説明を常に心がけていただきたい。
今回の長野県北部地震を教訓に、どのように「災害に強い県土づくり」を目指すおつもりか、知事に伺いたい。