平成29年6月27日

自由民主党県議団 宮本衡司

 

飯山市井出川における山腹崩落災害について

 

Q はじめに、一昨日、県南部を震源とする震度5強の地震が発生し、木曽地域では土砂崩れ、家屋の損壊、家屋の損壊、けがをなされた方もおりますが、現状と今後の対策等について伺う。

A(知事) 去る6月25日に発生した地震への対応についてお答えする。
一昨日の早朝、木曽町、王滝村で最大震度5強を観測した地震により、被災された皆様方に、まず、心よりお見舞い申し上げる。県としては地震発生と同時に警戒対策本部を県庁並びに木曽地方部に設置をするとともに、木曽町及び王滝村に職員を派遣するなど、関係町村とも十分協力をしながら、迅速な災害対応に取組んできている。現時点での被害状況は、負傷者が2名、人家の一部損壊が22棟などの状況であるが、加えて一部の道路では通行止めが続いている状況もある。
今後とも関係機関の皆様方と十分連携を図りながら、余震への対応、あるいは、復旧・復興に全力で当たってまいりたいと考えている。

心よりお見舞い申し上げるとともに、被害がこれ以上拡大しないよう願っている。

Q 5月19日早朝、飯山市照岡の井出川流域で発生した山腹崩落により、避難生活を送られている皆様に心よりお見舞いを申し上げる。以前の生活に一日も早く戻れるよう願う。

また、物心両面にわたるご支援をいただいた関係各位に、この場をお借りして心より御礼を申し上げる。ありがとうございました。

そして、いち早く現地に駆け付け、的確な対応をしていただいた北信地域振興局、建設事務所、保健福祉事務所、飯山警察署等々、県関係出先機関はじめ本庁知事部局、国土交通省、林野庁に心より感謝申し上げると共に、知事におかれては、22日に国土交通省の大野政務官への要望、25日には現地を視察していただき、重ねて御礼申し上げる。

山腹崩落が発生してから早いもので1か月が過ぎた。当時の新聞を見ると、「避難長期化の恐れ」とか「稲作断念も」、「用水濁り、取水不十分」と言った見出しが大きく踊っていた。

しかし最近は、5月末に「飯山に新砂防ダム検討」、6月中旬には「飯山の山腹崩落で流木食い止める柵」、「飯山砂防ダムに5億円」、そして18日には「流木止める柵設置完了」と、ものすごいスピードでの対応が分る見出しになっている。おかげさまで、6月23日、16:00をもって避難指示が避難勧告に切り替えられ、JR飯山線不通区間も再開されひとまず安堵したところ。

今回の補正予算案にも、恒久対策として砂防堰堤設置費が計上されており、県の対応の速さに驚き、感謝をしているというのが正直なところである。

県では、早々に土石流センサーの設置等による警戒避難体制の整備の他、土のう積、流木の流出防止等の応急対策をいただいたが、山腹崩落地から桑名川集落までの渓流内には、まだ、多くの土砂堆積物や桑名川砂防堰堤には多量の流木がたまっており、避難指示は解除されたものの、引き続き、避難勧告が出ている状況であり、地元の皆さんからは早急な対策が求められている。今回の山腹崩落の規模はどの程度であったか、このうち土石流として流れ出した量はどの位であったと承知されているのか。

A(建設部長) 山腹崩落した規模については、幅約150m、長さ約500mで、崩壊土量約60万㎥。このうち、土石流として流れ出た量については、既設砂防堰堤の捕捉状況から、約4万㎥を超える大量の土砂が流化したと推測をしている。今後、緊急に対応すべき渓流内に堆積している土砂量は、9万㎥と算定している。

Q 5月23日に飯山市長が今回の崩落からの復旧について阿部知事に要望に伺った。私もそこに同席をしたが、知事におかれてはお忙しい中にも関わらず、要望をお聞きいただいたが、その中に、発生源である山腹崩落の対策が急務であり、速やかな対応をお願いしたい旨のことが要望されている。梅雨末期の大雨、台風等々、山腹崩落の原因となる大雨はこれからも何度も降る。住民の皆さんがその都度不安な思いや、避難をすることなく過ごせるよう、今回の災害の源である山腹崩落が今後とも起こらない対策を講じることこそ必要不可欠である。

崩落の原因等については、国土交通省派遣の専門家の見解では、「崩落は融雪水が原因であり、融雪水の減少に伴って崩落は治まる。」とのことであり、現実にもその後崩落は発生していないが、恒久対策が完成するまでの間、どのような手が施されるのか。

今回の補正予算に、砂防堰堤新設の予算が計上されたことは、迅速な対応と評価するが、応急対策の経過と今後の恒久的な土石流や流木への対策について建設部長、また、発生源である崩壊地の対策について林務部長に伺う。

A(建設部長)まず初めに応急対策について。
建設部では、災害発生後早々に、下流住民の皆様の警戒避難体制づくりのため、渓床内に土石流センサー2基及び監視カメラ4基を設置し、林務部設置の機器との連動により、関係機関や住民の皆様等へ迅速な土石流発生等の情報を提供している。また、人家への土砂流入を防止するために、土のうとコンクートブロックを災害発生の翌日から設置した他、流木除去等の河床整理を行い、6月23日までに完了している。さらに流木が下流に流れ出るのを防ぐために捕捉用の鋼製柵4基を6月19日までに設置した。今後、既設堰堤に多量に捕捉されている流木及び土砂の除去をしていく。


次に恒久的な対策として、今回の補正予算を活用し、災害関連緊急砂防事業により、既設砂防堰堤の下流に砂防堰堤を新たに1基建設すると共に、被災した護岸の復旧工事を早急に行うこととしている。住民の皆様が一日でも早く、安心して生活できるように、飯山市、林務部、危機管理部、国等と連携し、対策を進めていく。

(林務部長)林務部としては、治山事業において、不安定な土砂が堆積し土石流の発生源となっている上流域の対策を行う計画。災害発生直後に、飯山市、建設部、林野庁と連携し、地上、あるいはヘリコプターによる上空からの調査を行い、その結果を踏まえて、土石流の再発生に備え、監視カメラ、土石流センサー、傾斜計等を設置し、建設部で設置した監視機器と連動した警戒体制を構築した。


また、恒久的な対策としては、上流域の堆積土砂の流出を防ぐための谷止工と、土石流の原因と考えられる湧水を減らすための山腹の排水工、事業費約3億2千万円について、当初予算の災害関連緊急治山事業で行うこととして、先般、国から採択され、昨日公表した。引き続き、飯山市、建設部、危機管理部、国等の関係機関と緊密に連携し、住民の皆様の安全・安心の確保に向け、全力で取り組んでいく。

Q 県内には整備を必要とする土石流危険渓流は4,027渓流あるが、整備済みの箇所は2割程度である。土石流災害は、ひとたび起こると生死に関わる。危険渓流への砂防堰堤整備が最も直接的で効果的な対策であることは、今回の井出川の例で広く県民の皆様に理解されたと考えている。
整備が必要な渓流への積極的な対策費用の投資は、真に必要な公共事業と考えるが、合わせて土石流対策について伺う。

A(建設部長) 今回の災害では、平成9年に完成した桑名川砂防堰堤により、約4万㎥に及ぶ土砂と多量の流木を捕捉し、下流での災害を防いだものと考えており、砂防堰堤の整備は、土石流の対策として有効な手段と考えている。
堰堤の整備にあたっては、限られる財源の中で、効果的に進めるため、重点化を図ることとしており、人的被害の可能性が高い老人福祉施設や保育園などの要配慮者利用施設や避難場所を保全する箇所を優先して、鋭意整備を進めていく。また、併せて警戒避難体制づくり等のソフト対策を実施しており、危機管理部、健康福祉部とも連携し、住民自らの参画による、地域防災マップの作成などの取組への支援も行っている。今後とも、ソフト対策も重視しつつ、ハード対策を着実に進め、土石流災害から県民の安全・安心を確保していく。

Q 今回の山腹崩落、土石流による被害は、4月より北信地方事務所から北信地域振興局へ組織体制が変わって間もなく発生いたしたが、関係部局、出先機関の初動体制や連携は如何であったのか。また、地域振興局の防災機能は十分に果たせたのか伺う。

A(危機管理部長)今回の災害では、飯山市が災害対策本部を設置したのと同時に、県及び北信地域振興局に「情報収集連絡本部」を立ち上げ、市の災害対策本部に県の情報連絡員を派遣している。また、避難指示が発令された際には、「警戒・対策連携本部」に切り替え、各部局や現地機関と連携を図り、被害や避難された方々の状況を把握し、災害対応を行ってきた。北信地域振興局においては、局長自らが現場に足を運び、北信建設事務所、北信保健福祉事務所棟の現地機関とも連携し、先程、建設部長、林務部長が申し上げた応急対策であるとか、農業用水が一時確保できなかった農家への営農指導など、迅速に対応してきたところ。


県としては、早期復旧に向けて、現地機関の要である北信地域振興局及び各部局がしっかり連携を図り、引き続き、災害対応に取組んでまいりたいと考えている。

Q 発災時は丁度田植えの時期と重なり、泥流となった出川からの農業用水の取水が不能となった。市では、急遽、延長400mをØ300mmのパイプにより仮設配管し、凌いだが、その際、北原農政部長には現地にて仮設配管や営農の指導をしていただき、おかげさまで無事に通水でき。ぜひ、来期に向けた農業用水の確保にもお力添えを賜りたく、お願い申し上げる。
現地では早い時期より、多くの飯山警察署員に交通規制や警備に当たって頂き、大変助かった。その経過と状況等について伺う。

A(警察本部長)県警では5月19日飯山市から連絡を受け、警察本部、飯山警察署に『災害警備連絡室』を設置するとともに、飯山市災害対策本部と現地対策本部に警察官を派遣し、関係機関と連携し警戒態勢を確立した。22日の土石流の発生による住民避難指示の際には、住民の避難誘導、安否確認、現場付近の交通規制等を実施した。また、その後も引き続き飯山署員や本部自動車警邏隊等による避難地域のパトロール、避難中の立ち寄り警戒、県警ヘリコプターによる状状況確認等を行っており、延べ600名余の職員が活動した。県警では今後も引き続き県や飯山市と連携し、住民の安全安心確保のために必要な対策を講じていく。

Q 避難勧告とはなったが、該当する4世帯14人が、市教員住宅やトレーラーハウスに仮住まいをしている。避難所での生活に比べると家族ごとの生活となり、多少なりとも気持ちが休まるのではないかと思っているが、避難生活はこれから先もしばらくは続くものと考えられる。また、帰宅できたとしても大雨等の際の精神的な不安は、大きなものがあろうと思う。
地元の飯山市議会においても、避難されている方々への精神面での支援についてしっかりと行ってほしい旨の話があった。この辺りは一義的には市で対応すべき課題ではあるが、長期化が予想される中、仮設生活をされている方々への精神面での支援について、県として保健師の派遣はじめ、メンタルヘルスについてどのようにお考えか。

A(健康福祉部長)今回の飯山市における山腹崩落災害に際しては、発生直後から、飯山市役所の保健師が避難施設等を訪問し、精神面を含む健康相談を行ってきた。この間、初期の段階においては、北信保健福祉事務所の保健師が、飯山市の保健師に同行して、健康相談や状況確認を実施している。


避難生活が長期化すると、不眠や気持ちの落ち込みなど、心と体に変化が生じやすいことから、今後とも飯山市との連携を密にしながら、県の保健師の派遣など、避難生活者の健康管理に必要な支援を行っていく。

Q この地区には平成25年に結成された「桑名川区自主防災隊」があり、県の「地域発元気づくり支援金」を活用し、防災に関する知識の普及に努め、有事の際には情報収集・伝達、避難誘導、救出・救護、応急(救護)、給食・給水に当たり、訓練や防災資機材の備蓄をしている。今回、初期の段階から本部長である区長を先頭に、この組織が活躍し大いにその成果をあげている。また、交代で24時間警戒に当たっていただいた消防団員の活動には、ただ、ただ敬服するのみである。県内各地の自主防災組織に対するより一層の支援が、今後も不可欠と考えるが如何か。

A(危機管理部長) 今回、桑名川区においては、自主防災組織が発災直後から地域住民への情報伝達、避難の呼びかけを行い、役員の皆様が24時間態勢で警戒に当たり、住民への情報伝達や市、県との情報共有等、行政と住民との円滑な橋渡し、区民の安全確保の役割を果たしていただいた。


このような自主防災組織による地域の助け合い、「共助」の取組は、県民の生命・財産を守る上で、非常に重要であると考えている。
そのため、県内各地の自主防災組織に対する支援として、
・実践的、体験的な県政出前講座の実施や自主防災アドバイザーの設置等による自主防災組織の体制整備
・土砂災害ハザードマップ作成のための基礎データ等の提供
・地域発元気づくり支援金等の各種財政的な支援
を行ってきている。今後も、長野県強靭化計画における重点項目でもあり、長野県の強みであります地域の「絆」を活かした地域防災力の更なる充実について努めてまいりたいと考えている。

Q 名立たる豪雪地飯山は、雪害はもちろん、水害、地震等々、様々な自然災害を過去幾度となく経験してきたが、このような規模の土石流は初めてのことである。今後、長期化することが予想されるが、県におかれてはより一層の復旧・復興対策にご尽力いただくよう、重ねてお願いする次第。

私は6年前の栄村で発生した震度6強の震災を目の当たりにし、痛感したことは平素から有事を想定した備えが必要であり、今は無駄と思われても将来必ず役に立つ事がある。普段は気にもかけない、或いは、目につかない物や人々によって生活の安全が確保されているということを、身に沁みて感じた。

国土の67%、県土の78%を占める森林から私たちは計り知れない程の恩恵を受けている。山地災害の防止は言うに及ばず、水源の涵養、二酸化炭素の吸収、木材の供給、自然環境の保全、癒しの場の提供等々、その公益的機能の評価額は平成13年日本学術会議が試算したところによると、国全体で年間70兆2,638億円、国民一人あたり、1日1,600円。長野県は3兆681億円、県民一人あたり3,800円となる。年一杯のコーヒー代を森林整備にまわすことにより、私達は結果として、それ以上の金額を毎日森林から享受していることになる。

辰野町にお住いの元信州大学教授、山寺喜成(やまでら よしのり)先生は『山地防災に関する課題と提言』のなかで、「土石流発生のエネルギー源は、通常山腹崩壊(森林崩壊)である。」と書かれています。そして、提言では「森林自体の強じん化対策をベースとする山地防災対策を推進すること。」と述べられている。

また、『美しい里山づくりの提言』においては、「災害に強い森林を創造するには、災害発生の本体である森林を強化することが最も重要なこと。戦後、国を挙げて一斉に植栽されたスギ、ヒノキ、カラマツなどの人工植栽林が、植栽後に間伐などの管理が行われずに放置され増えていることも、崩れやすい森林が形成されている原因のひとつ。間伐などを行わず過密状態で放置すると、根系(こんけい)の発達が悪く生育範囲も狭くなり、早期に衰退が生じ、容易に倒木する。」とあり、そして

『有効で合理的な防災対策を行うには、「災害発生源の抽出」が最も重要であり、不可欠な要件である。これを欠いた場合、当然、有効な予防対策、適正な防災対策の実施は困難になる。たとえ膨大な経費を投じても、災害の発生源が不明では、災害発生を抑制したり、予防することはでない。結局、これまでのように事後処理的対策に終始し、予防対策が軽視され、「災害の繰り返しが続く」との懸念に到る。つまり、「予防対策を重視した防災対策」の実施が望まれる。』と仰っている。

人口減少時代を迎え、県内の(中)山間地域は過疎化・高齢化が進み、地域を維持するためにも、そこに住む人々の暮らしと安全を守っていくためにも、持続的に森林を整備していく必要があると考える。構造物による防災対策と共に、ことほど左様に森林整備は極めて重要である。

有効で合理的な防災対策を行うには、集落周辺における土石流の発生源となる山腹崩壊危険個所の抽出は極めて重要であると考える。

聞くところによると、辰野町小野地区でこれを実施しているとの事ですが、その内容について伺う。

A(林務部長)議員ご指摘のとおり、土石流等の山地災害を未然に防ぐためには、その発生源となる山腹崩壊が発生しやすい箇所を把握し、計画的に森林整備や施設整備を行う災害に強い森林づくりを進めることが重要と考えている。このため県では、平成25年度より全国に先駆け、県内民有林全域を対象にした航空レーザ測量を実施し、地形や森林の混み具合などを基に山腹崩壊等の危険箇所を効率的に把握する取り組みを進め、本年度から運用を開始した。


議員お尋ねの辰野町小野地区においては、こうした取組に先駆けて地域の防災活動として、信州大学元教授の山寺先生の御指導のもと、独自の航空レーザ測量データを基に、地形や地質条件から土石流の発生源となる山腹崩壊の危険箇所を抽出し、防災マップを作成されている。


県としては、今後、航空レーザ測量の成果を積極的に市町村や地域に提供し、辰野町小野地区での取組などを参考に地域ぐるみで山腹崩壊等の危険箇所を共有する取組を、建設部等とも連携しながら進めるとともに、森林整備や計画的な治山事業等を行うことにより、県民の皆様の安全・安心の確保に努めていく。

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森林税の評価と森林整備の基本的な考え方について

Q 現在の長野県民有林の状況は、平均の林齢が60年近くと聞いている。

これは、最後の仕上げをしてやることで、山村の資源としてようやく活用できる状況となり、地域に雇用と活力を生む一歩手前にあるのだと私は考える。

岐阜県恵那市などでは、地域住民や様々な立場の方々が参画し、「木の駅プロジェクト」として、森林整備と地域通貨を組み合わせ、地域活性化に繋げている事例があると聞いている。中々、ご苦労も多いようではあるが、彼らの活動が所有者の意識を変え、地域通貨を通じ、商店街が活性化し、地域で地域のことを考えることに繋がったとのこと。

森林の整備はもとより、その適切な管理を所有者に任せきりにするのではなく、地域ぐるみで地域の森林がどのような状況にあり、そしてどうするかを、特に、身近な森林である里山にあっては考えるべき時機にあると考える。

 

長野県町村会では、去る5月16日に、森林税の継続と、地域の実態や町村固有の実態に即した事業、森林整備が実施できるよう知事要望を行っている。また、市長会では、5月31日に、市町村における森林づくりが促進され、柔軟かつ効果的な活用を検討するとともに、継続することを知事要望されている。さらには、森林づくり県民会議にあっては、6月2日に、森林の果たす役割や取組状況に鑑み、森林税は継続すべきとした上で、使い勝手に対する工夫等を含め、次回以降具体的な検討に入るとされている。

 

一方で、大北森林組合の補助金不適正受給事案にあっては、森林税の一部が充てられてしまったということは、誠に残念で、痛恨の極みである。

既に再発防止や返還に向けた取り組みが進んでいるところだが、この事案は未曽有の事案として大いに反省し、再発防止に向けた取り組みを進めることは当然のこと。しかしながら、今、申し上げてきたように、長野県の森林は、間断(かんだん)なく対策を講じなければ、災害の危険にさらされ、管理の放棄により二度と手が入らない状態となる危険をはらんでいる。

また、地方創生が喫緊の課題である中で、身近な里山こそ、木材利用をはじめ、様々な観点から活用が期待できる財産であると考える。

さらに言えば、県民の様々な場所で、森林が活き活きと輝き、生活に活かされていることが、観光を含め、長野県の強みになるのではないか。

 

森林税については、県民に様々な意見があることは承知している。

しかし、先程来申し上げているように、こうした時に立ち止まるのではなく、使途の拡大や市町村にとって使い勝手の良い柔軟な制度に変え、その上で、迷うことなく、知事におかれては継続を決断していただくよう強く要望し、今までの森林税の使い方に対する評価と森林整備の基本的な考え方についてご所見を伺う。

A(知事)議員の質問の中にもあったように、森林は多面的な機能を有している貴重な財産だと思っている。また、私ども、今の時代を生きる人間だけではなく、前の世代の皆さんから引き継ぎ、そして、将来世代へとしっかりと引き継ぐべき財産でもあると思っている。


加えて、山崩れ等山地災害を防止する機能も有しているわけで、県土の8割が森林という長野県においては、適切な森林の手入れを通じた防災・減災の推進、そして、多面的な機能の維持、向上が大変重要と思っている。
森林づくり県民税を活用した森林整備については、10年間の目標とした38,400haに対し、32,210haの里山の間伐が実施される見込みとなっており、従前の施策では取り残されがちであった県民の皆様方に最も身近な森林としての里山の間伐が一定程度進展するなど、概ね当初の目的としてきた成果が得られつつあると考えている。


県民の皆様方の安全・安心な暮らしを確保するためにも、森林整備は引き続き重要な政策であると考えており、また、これからの時代においては、例えば、学びの場であったり、県民、あるいは長野県を訪れてくれる皆様の憩いの場としての森林であったり、総合的に森林を活用していくといった取組も重要と考えている。
とはいえ、森林づくり県民税、そのもののあり方については、県民の皆様方からは超過課税という形で通常の税率、標準税率を上回って御負担いただくものであり、税制研究会あるいは県民会議における御審議、あるいは、現在、県民の皆様方へのアンケート調査を行っているので、こうしたものも十分踏まえ、今後の方針を定めていきたいと考えている。

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建設産業の振興について

Q 被災地において、交通規制や夜間警備に当たる警察官、火災が発生すればいち早く現場に駆けつけ消火活動する消防士、本業がありながらも24時間パトロールを、ものともせず任務を遂行する地元の消防団、応急工事に昼夜を分かたず、休みもなく、地域を守るために黙々と仕事をする地元建設業者、有事の際に身を挺して国家国民の財産生命を守る自衛隊員、様々な方々のおかげさまで我々の日常生活は成り立っている。本当に大事なもの、必要なものは普段は目に見えないが、実はそれが一番重要なもの。

今回、人的被害、建物の損壊もなかったことは奇跡的あったと専門家も仰っている。それは、20年前に井出川に設置された、ひとつの砂防堰堤が地域を守ってくれたからに他ならない。これが無かったら、被害は更に拡大し、JR飯山線、県道箕作飯山線への直撃は避けられなかったことは、誰の目にも明らかだ。

奥深い山中にあり、その存在すら知られていなかった堰堤は、数十年に一度あるかどうか分からない災害に備え、先人たちが将来を予測し、およそ5年の歳月をかけ建設されたもの。今回その役割を見事に果たしてくれた。

「ダムはムダ」、「コンクリートから人へ」等と、建設業が正当に評価されない不幸な時代がかつてあった。

今回、堰堤が人々の暮らしを守ったことが、建設業者、とりわけ若手技術者・技能者たちの励みとなり、誇りと自信を持って今後も仕事をしていただけるよう願う。

 

遡ってみると、平成24年経済センサス調査によると、長野県内の建設事業所数は12,953事業所で全産業の11.9%、従業者数は71,768人で同7.7%と、大きな業界である。平成27年3月末現在、長野県における知事・大臣許可登録数は7,985社で前年7,981社と、平成12年をピークに減少傾向が続いていたが、わずかながら前年から増加したとある。県内建設業者の17.6%は個人事業者が占め、個人事業者と資本金1千万円未満の業者を合わせると、61.5%に上り、小規模零細業者が多く裾野の広い業界構造となっている。平成26年度の県内建設投資額は官民合わせて7,665億円で、長野冬季オリンピック関連工事が盛んであった平成7年の1兆9,979億円と比較し61.3%減と大きな落ち込みとなっているが、平成24年と比較すると僅かながらここ2年は増加している。

公共工事は、平成15年2月談合防止などを狙いにした競争入札を取り入れ、本格的な制度改革に踏み切ったものの、落札率の低下に加えて受注確保も不確実なものとなり、仕事量の減少と受注単価の下落といったダブルパンチを受けた。それにより、地元建設業者の体力は著しく低下し、健全な経営もままならず、地域を災害から守る能力を喪失してしまった。

長野県は脆弱な地盤が多く、自然環境の厳しい山間地を多く抱えている。そのような中で、技術力の高いと言われる大手建設業者だけでは、地域を守ることは困難だ。地域を知り、地域に根差した、災害時に即応できる優秀な地元業者の存在が不可欠だ。これ無くして、地域の安心、安全は守れない。

これは全国建設業協会のデータであるが、少子高齢化が進むなか、特に建設業においては、就業者数のうち約3割が55歳以上である一方、29歳以下は約1割であり、全産業を大幅に上回るペースで高齢化が進展している。このため、将来にわたる担い手不足が強く懸念される状況にあり、処遇改善や教育訓練の充実・強化等その対応が急務となっている。

特に、北信地域においては除雪作業のオペレーターなどは地元の道路状況を熟知し、経験に基づいた作業になるので、資格があるからと言って、一朝一夕にできるものではない。

地域において必要な社会基盤を、長期に使用できる良質なストックとしてつくり、着実に維持管理していくことが求められている昨今、地域の建設産業はまさに「人材投資成長産業」であり、「人材育成」を重視した長期的な施策の展開が今求められているのではないか。

また、「地方創生」という大きな命題に対し、必要な事業量の確保は、建設業者が将来に亘って社会的使命を果たしていくためにも、無くてはならないものだ。おかげさまで、平成29年度当初予算において、補助公共、県単独公共、直轄事業負担金を合わせた公共事業費は997億円と前年度並みの額が確保された。

「地域を支える建設業」は地域の基幹産業として、経済の発展と雇用維持に大きく貢献しているが、そのなかで建設業が適正な利潤を得て、経営基盤を強化、安定させ、それを社会に還元できるような好循環をつくるためにも、将来的な見通しを持って、積極的に労働環境の改善や人材育成に取り組まなければならない。その事を広く県民にも理解して頂きたいと思う。

人材育成、工事量の確保はもちろん、失格基準価格の引き上げをはじめとする入札制度改革、週休2日に伴う経費増への対応等々、具体的な建設産業振興策、また、公共工事に対する基本的な考え方を知事に伺う。

A
(知事)今回の飯山市における井出川の山腹崩落災害、あるいは一昨日の木曽の地震災害においても、地元建設企業の皆様方には迅速な対応を行っていただいている。改めて関係企業の皆様に感謝を申し上げるとともに、改めて地域の安全・安心の守り手としての建設産業、建設企業の存在は大変重要だと考えている。


入札制度においては、競争性を確保しつつ、入札の参加要件、あるいは総合評価落札方式の加点項目において、すでに地元企業の受注機会の確保に配慮しているところだが、今後とも「長野県の契約に関する取組方針」に基づき、地元企業の発展にも配慮しつつ、入札制度のあり方を検討していきたいと考えている。


また県では、「建設業の経営安定と労働環境の整備を一体的に進める取組」といたしまして、予定価格の適正な設定、発注時期の平準化、週休2日のモデル工事などを実施している。
公共工事は、良質で強靱な社会基盤を将来に向けて提供していくための重要な事業であることから、引き続き必要な予算の確保に努めまるとともに、公共工事を支える建設産業については、重要な県内産業の一つとして、担い手の確保・育成等、その振興に取り組んでいきたい。

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