平成28年11月30日

自民党県議団 宮本衡司

 

このところ北信建設事務所管内では、地域住民の長年の悲願であった国道117号替佐静間バイパスや主要地方道飯山野沢温泉線戸那子バイパスが相次いで開通し、交通の利便性が格段に向上した。知事はじめ、関係各位に厚く御礼申し上げる。

豪雪地における建設産業の育成について

Q 11月8日早朝に発生したJR博多駅前の大規模陥没事故が1週間で仮復旧したことが、国内外で大きな話題になった。NHKが映像をライブ配信する等、誰でも施工状況がみられる報道体制もあったとは思うが、昼夜を問わず復旧工事を進め、まさに、日本の土木技術、建設業の底力を見せつけるような出来事だった。福岡県では、炭鉱跡地が多いため陥没事故の発生が多く、建設業者が従前からの事故処理を通じノウハウを蓄積していたことも早期復旧の大きな要因のひとつであったようだ。

災害発生時、頼りになるのは何と言っても地元の建設業者である。

建設業者の技術力・機動力を平時より如何に確保しておくのか?その方策について建設部長に伺う。

A(建設部長) 小規模な災害に対しては、道路施設をJV企業などで、また、その他の土木施設では当番企業がそれぞれ対応することとしており、その選定に当たっては、各企業における作業員数や資材・機材等の保有状況等を確認している。

また大規模な災害に対しては、建設業協会など各種団体との協定に基づき対応することとしており、災害時に必要となる建設資材や機材については、年度当初に双方で保有状況等を確認することで備えを図っている。これらの体制により、平成26年度の神城断層地震をはじめとする災害においては、迅速な対応が可能になったものと理解している。

一方、こうした体制の維持には、企業の経営安定とともに、そこで働く皆さんが働き続けられる労働環境の整備が不可欠である。そのため、建設部では、「経営の安定と労働環境の整備を一体的に進める取組」として、失格基準の引き上げや予定価格の適正な設定、発注の平準化、工事現場における週休2日のモデル工事の実施などを行っている。引き続き、県民の安全・安心の確保に向け、災害時に建設企業の力が十分発揮できるよう、建設産業の育成と連携強化を図っていく。

Q また、かねてから申し上げているように、技術の職員は過度に削減するのではなく、むしろ、質・量共に向上を図るべきと考えている。

例えば、一つの橋梁について長寿命化を実施する必要性や実施方法について、民間のコンサルタントに全てを任せるということで良いのか。更に申し上げると、災害等発生時においては、県内の小規模市町村へ多くの技術職員の派遣が必要となる。職員定数は行政改革と絡んで非常に難しい課題とは考えるが、県においては、今後も必要な技術職員数をしっかりと確保していただくよう強く要望する。

『飯山市南の玄関口』秋津地区内で、9月から11月末にかけて県の発注した工事が2ケ所において一時期重なった。一つ目は伍位野交差点付近の国道292号の無散水消雪道路修繕工事、二つめは国道117号にかかる宮沢川橋の長寿命化。何れも必要な工事であり、着工していただき地元としてうれしい限り。地元住民は、特に五位野交差点付近の整備の重要性をよくご存じで、気持ちよくご協力いただいており、施工業者も安全確保のため手厚く交通誘導員を配置していることもあり、大きなトラブルは聞いていない。

しかしながら、同時に2か所の工事が重なることにより、朝夕の通勤時間帯には少なからず渋滞が発生した。これは、工事期間が短いという豪雪地帯特有の条件によるものではないのかと、思われる。

飯山では11月ともなれば陽気は寒く、おまけに霙混じりの日が次第、次第に多くなる。春は雪解け水により地盤が軟弱となり、しっかりするのは4月も下旬になってからとなる。11月中までは頑張って工事を行い、積雪のある間は工事を休み、雪解けを待って工事を再開するというパターンの繰り返しは、豪雪地帯では慣例となり、地域住民が「早くから着工すれば、もっと良い工事が出来るのではないか。」との疑問を持つのは無理からぬ事と思う。

特に豪雪地帯、飯水・岳北地域や大北地域においては、『発注した工事は出来るだけ当該年度中に終えるようにする。』このためには、『従来の発注方法を踏襲するだけではなく、新たな発注方法を含めて検討を加える。』

このことにより質の良い工事を行うことになるのみならず、豪雪地帯の業者に対しても工事の施工時期の均霑化をもたらし、業者の経営の安定にも寄与出来るのではないかと考えるが如何か。

A(建設部長) 工事の発注については、毎年度、県全体の上半期の契約目標を立て、それに基づき各現地機関において、月別の予算執行計画により、計画的な執行に努めている。また、年間を通した工事の平準化の観点から、早期契約制度やフレックス工期契約制度にも積極的に取り組んでいるところ。

議員ご指摘のとおり、豪雪地帯では、冬期の施工が困難なため、年度早期の発注が強く求められている。昨年度から、年度当初の施工が可能なゼロ県債の対象工事の拡大を図っているが、今年度、新たに、その対象を交付金事業まで拡大すべく、本定例会に予算案をお願いしている。こうした取組により、豪雪地域においても、早期の工事着手を図っていく。

 

Q 今年も春から数多くの道路関係の同盟会や地区の懇談会に、地元の県議として出席した。一昔前は、このような席ではあそこへ道路を作れ、ここへ橋を架けろと言った要望を聞かされることが多かったが、最近は些か様相が変わってきて道路の維持に関する話を多く聞くようになった。

今年の夏は暑かったせいか国・県道を始めとする道路沿いに雑草が繁茂することがおびただしかった様に思う。以前は、地域の住民にも若い人が結構おられ、畑や田んぼに隣接した国・県道の法面の草を刈ってくださる人もおられたそうだ。しかし今や、人手の問題と生産性の問題から自分の畑ですらも手が回らないということが多い時代となった。つまり、実質的に県の行う草刈りの面積が増えたということになる。

伺えば、現在北信建設事務所飯山事務所には草刈専用車1台があり、これで管内をカバーしているとのことである。今年の夏には、一時期飯山事務所の草刈専用車が故障してしまい、修理のために稼働できない日があり、このことが道路法面の雑草の繁茂の原因のひとつとなったという声も聞いている。

 

全ての建設事務所の状況を調べたわけではないが、大同小異で、各事務所とも春から夏にかけての道路法面の草刈りには、機械力の不足で大いに難儀をしたのではないかと考えており、今後、草刈専用車が足りているかどうかの調査を実施し、不足していると思われる事務所には計画的に増やしてほしいものと考えるが、如何か。

A(建設部長) 草刈専用車については、平成6年度から計画的に配備を行っており、今年度までに、佐久北部・中野・飯山事務所を含む全建設事務所に配備をした。また、今年度から、専用車をより有効に活用するため、全ての車両の運行スケジュールを県全体で確認・予約できるシステムを導入し、今まで以上に事務所の枠を超えて柔軟に利用できるようにした。

草刈については住民の皆様からの要望も多いことから、車両の事務所間での相互利用や草刈時期の工夫により、一層効率的な除草に努めるとともに、専用車の利用状況を把握したうえで老朽車両の更新及び増強の必要性について検討していく。

 

Q 最近は電動カートを運転して畑に行くという高齢者が増えているが、除草が間に合わずカートの運転に支障をきたすので何とかしてほしい、といった話を聞くことも多くなった。特に過疎地においては、いつまでも元気で農作業に勤しんでいただく為に道路際の除草も欠かせぬ時代となった。

このように維持と言う、どちらかと言うと、地味でお金のかかる事業にはなかなか予算がついているという感じがしない。

これは建設部が財政当局に要求をしないのか、当局が予算をつけてくれないのか、私には知る術もないが、いずれにしても県民にとっては深刻な問題のひとつである。

必要な『道路や橋』を建設するという大型事業を推進して頂くことは勿論だが、県下の大半をしめる過疎地域ではこのような維持作業もしっかりと行ってほしいということが、そこに住む皆さんの願いである。

道路・河川の草刈り、立木の伐採、舗装修繕、ライン引き等といった仕事は毎年、毎年の話であり、確実な予算措置が必要と考える。信州にお出でになる観光客の皆さんのためにも、地域住民にとっても必要。

建設部長はこのような出先機関や地域の要望は聴いておられると思うが、予算要求に際してはどのような考え方で臨んでおられるのか。

A(建設部長) 道路の舗装修繕や草刈、河川の立木の伐採をはじめとする維持修繕費の確保は、議員ご指摘の通り地域の要望も強く、また、既存ストックの有効活用の面からも大変重要と認識している。

今年度の建設部当初予算における維持修繕費の割合は、補助公共事業で10年前の平成18年度13.5%に対して16.3%、県単独公共事業では平成18年度41.7%に対して62.3%と、維持修繕予算の重点的な措置に努めてきている。これに加え、9月補正予算においても、国の補正予算等を活用して、維持修繕に係る予算を追加計上させていただいた。

今後とも、限られた予算の中で最大限の工夫をして、維持修繕費をはじめ公共事業予算の確保に努めていく。

 

Q 重ねて申し上げるが、自然環境の厳しい地域の建設産業が持続的に発展するためには、発注工事の平準化対策が不可欠と考える。

北信地域は全国有数の豪雪地であり、工事が出来ない期間は融雪期を含めおよそ5か月に及ぶ。このため、工事可能な期間は5月から11月の7か月、210日間に限られており、この期間を有効に活用した予算措置が求められている。しかしながら、補助事業などの大型工事は5月に施行通知、6月公告、7月末契約、8月から工事準備するなど最短で進めたとしても、現場作業期間はたった60日程度となってしまい、そのまま長い工事不能期間となる。

現場は完成せず、中途半端な状態は県民に大きな不安を与えるばかりでなく、施工業者には現場管理のための人件費やリース代等が発生し、負担増となり、地域の建設産業の健全経営に大きな障害となっているものと思われる。

工事発注においては、規模と種別に応じて「標準工期」を定めて発注していると伺っている。

これを元に、北信地域で可能な工事規模について分析してみると、まず、受注希望型入札で発注する比較的小規模な工事では、工事準備の40日間を含めた工事可能期間は150日となり、これを標準工期として各種工事に照らすと、可能な工事規模は道路・道路維持・砂防工事では約3,000万円、舗装工事では約6,000万円程度となる。

さらに、総合評価落札方式で発注する3,000万円を超える比較的大きな工事では、工事準備期間の60日を含めた工事可能期間は120日となり、これを標準工期として各種工事に照らすと、可能な工事規模は道路・道路維持・砂防工事では約2,000万円、舗装工事では約3,000万円程度までとなり、3,000万円を超えるほぼ全ての工種で必要な工期が確保できず、長い工事中止の後、次年度への繰り越しを余儀なくされることとなる。

北信地域における工事可能期間を最大限有効活用するためには、入札・契約事務や工事準備作業を工事不能期間である除雪・融雪期に行う必要があり、このためには年度を跨ぐ予算措置である「債務負担行為」が最も有効な手段となるのではないか。そうすれば、最大で標準工期270日を必要とする、概ね2億円規模の工事までを1シーズンで施工可能となり、冬前に完成した後に除雪作業に専念することができる。このことは、豪雪地域の県民にとっても安心・安全につながる唯一無二の施策と考える。

今定例会補正予算案においても「債務負担行為」を随所に設定して頂き、大変ありがたい事で感謝申し上げる。ついては、北信地域や他の豪雪地においての予算措置は、例えば、概ね3,000万円以上の工事を発注する場合は全て「債務負担行為」を設定することが工期確保の観点から、有効な手段かと考えるが、債務負担行為設定の考え方も含めて、建設部長に所見を伺う。

A(建設部長) 工事の発注に際しては、その規模や内容、現地の自然的・社会的条件等に応じて工期を適切に設定するよう努めている。

その工期が年度内に確保できない事業箇所については、債務負担行為を予算化しており、北信建設事務所でも、昨年度後半の発注工事45件のうち、31件で債務負担行為を活用している状況である。

県の北部地域など、積雪の影響によりまして工事可能期間が短い地域においては、今後も引き続き、早期契約制度やゼロ県債の活用によりまして、適切な時期の発注に努めるとともに、必要に応じ債務負担行為を活用し、適切な工期を確保してまいりたいと考えている。

 

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信州学と地域創生について

Q 教育委員会においては、今年度から全県立高校で「信州学」に取り組んでいる。このためのテキストとして去る6月に「私たちの信州学」を作成し、生徒に配布したと聞いている。
「グローバル化が進む社会において、主体的に生きる力の基礎となり「根」となる、自らが生まれ育った地域の文化・産業・自然を理解し、故郷に誇りと愛着を持ち、ふるさとを大切にする心情を涵養する」ことを目的として今年度から全県立高校で取り組んでいるとのことである。

 

話はかわるが、今月11日、正副議長を先頭に、議会広報委員会の「こんにちは県議会です」で松本県ケ丘高等学校へお邪魔してきた。議長による県政報告の後、生徒たちと「観光」・「農業」・「地域活性化」について、5班に分かれてグループディスカッションを行ったが、生徒たちは実践的な意見をよくまとめてあり、大変有意義なものとなった。「これも、生徒たちが信州学に取り組んだ成果のひとつでは。」と思われるが、改めて信州学について伺う。

 

そもそも信州学とはどのようなものか、そして各県立高校においての取組状況は如何か。副読本として扱い積極的に取組んでいるのか、それとも配布して終わりなのか。現状を教育長に伺う。

A(教育長) 信州学の目的は議員ご指摘のとおりである。そしてさらに、単に地域を知るという学習にとどまらず、地域をフィールドにして、自ら課題を見つけ、追究し、地域と関わり合いながら新たな課題に取り組んでいく「探究的な学び」の過程を通じ、高校生が地域の主人公として、どういう社会にしていったらよいのかということを考え、「新たな社会を創造する力」を身に付けていく学習であるというふうに捉えている。

各校での取組の状況については、議員から松本県ケ丘高校の取組をご紹介いただいたが、例えば、長野工業高校では、信大工学部と協働し、地域の公共交通のあり方について研究している。具体的には、公共交通の廃止に直面している地域に出向き、地元の高校生や中学生への聞き取り調査を行ったり、データ集計や分析を行ったりして、現在、高校生の視点から解決策を立案しているところである。今後、まとめた提言を、2月の全国ものづくり高大連携発表会マッチングフォーラムで発表することにしている。

このように、それぞれの高校で、「わたしたちの信州学」をテキストとして活用するだけではなく、各地域に根ざした取組を進めているところである。

 

 

Q 確かに、自分の生まれ育った地域のことを知ることは大切である。小・中学校においては地域の成り立ち、自然文化、そして産業などについて、高校生になった暁にはふるさと長野県のことを知ってもらうことは、グローバル化の進んだこの時代であれば、なおさら大切なことと考えるが、教える側の先生方が『どの位長野県のことを知り』『どの位熱意を持って生徒に教えていただけるのか』が肝要かと思う。また、「信州学」を高校生のみならず、県民のみなさんへ周知することも大切なことであろうと考える。

これらを踏まえ、今後、どの様にして信州学を普及させていくのか、具体的な進め方についてのお考えを、また、各高等学校と市町村との連携をどの様に進めて行くのか。

A(教育長) 信州学は、学校の中だけで完結するものではなく、地域をまきこみ、地域の活性化にもつながる可能性を持っているというふうに考えている。今後、全県的な推進委員会を設置し、企業や社会教育施設、大学などとも連携し、各校の取組を地域と共有していきたいと考えている。また、探究の成果発表を行う場として「信州学サミット」を開催したり、テキストをデジタル化したりするなどして県民の目にも触れていただくような、高校以外への普及も図ってまいりたいと思っている。

各校と市町村が連携した取組としては、例えば飯田OIDE長姫高校では、学校が飯田市と結んだパートナーシップ協定を活用し、運営は学校、人やモノのコーディネートは飯田市公民館が担当する「地域人教育」というものを信州学として実践している。この取組では、生徒が地域に入って課題を見い出し、その解決策として、買い物弱者の見守りを兼ねたリヤカー行商や、地域の大人を動かし、空き家をシェアハウスとしてオープンさせるなど、地域に良い影響を与えるような活動づくりを行っているものである。

こうした取組を紹介、周知する中で、学校と市町村の連携が広がるように努めてまいる所存。

 

Q 知事は、先に、他県にはない取組として、長野県、長野県教育委員会に加え、市町村、市町村教育委員会による「県と市町村との総合教育懇談会」を開催したとのことであるが、教育行政において、積極的に県と市町村との連携を打ち出した知事の姿勢は評価に値すると考える。

懇談会においては、「中山間地域の子どもたちの学び」をテーマに意見交換を行ったということであるが、これは、学校の小規模化や統廃合など、多くの市町村にとって課題となっているテーマである。

今後、知事は、総合教育懇談会の議論をどう活かし、このような課題にどのように取り組んでいかれるのか、伺う。

 

A(知事) 今回、懇談会のテーマは、「中山間地域の子どもたちの学び」である。長野県の将来を考えたときに、県内及び中山間地域の未来をどう描いていくかということが極めて重要だと考えている。その中で中山間地の子どもたちをとりまく環境、学校の統廃合をはじめとして、様々な難しい課題がある。他方、山村留学や、あるいは急速に技術革新が進んでいるICTの活用等による可能性も、また大きく開かれつつあるのではないかと思っている。そういう思いを持ちながら、今回、市町村長、市町村の教育委員長の皆さま方と懇談をさせていただいたが、私が感じたことはまず、ひとつは、小中一貫、あるいは幼保あるいは高校までを視野に入れての、子どもの立場にたった一貫的な目線で行政が関わっていくことの重要性、これは野沢温泉学園ということで野沢温泉村が実践されているお話も伺った。また、スキー科ということで地域の特色や個性を生かした教育の重要性、そうした取組に地域の住民を巻き込んでいくということの必要性ということも痛感をした。

さらには例えば飯田市では、小学校の存続困難地域では、地域振興住宅の建設によって、子育て世代を呼び戻す取組を行っているという話があった。これなどは、教育委員会だけの教育、学校のあり方を考えるのではなく、地域振興全体を考える中で、学校のあり方を位置づけていくことが重要だということにつながる話だと思う。また、学校という場自体が、学びの場であると同時に地域コミュニティの核としていく必要があるというふうにも考えており、そうした趣旨のご提言もいただいている。こうした様々なご提案等いただいた。

今後、4者でプロジェクトチームの設置をしていく。12月中には立ち上げて、具体的な議論を行って、成果に結びつけていきたいとに思っており、またこの懇談会、今後も定期的に開催する中で、他のテーマについても議論を深めていきたいと思っている。また、今後、総合5ヵ年計画策定していくわけであり、教育振興基本計画の策定も予定されている。県と市町村、そして首長と教育委員会、教育長が問題意識を共有し、出てきた方向性については、こうした大きな計画の中にも位置づけていきたいと考えている。

 

Q 長野県では平成30年4月の開校を目指して、県立大学を現在建設中である。240人の募集人員のうち「県内枠」は50人程度設けるとのことで、卒業後は長野県、そして日本の将来に役立つ人材となってほしいものと大いに期待している。

先ごろ、上田市において1回目の大学説明会が開催されたとの事だが、保護者・生徒達からはどのような質問・意見があったのか。

A(県立大学設立担当部長) 大学説明会については、11月23日の上田市を皮切りに、県内5会場での開催を開始しており、金田一学長予定者による目指す大学像の説明や、学生寮、海外プログラム、入学者選抜などの大学紹介、教員候補者等による各学科紹介や、模擬授業も行っている。

高校生や保護者、教育関係者など、上田市では約80名、11月27日に行った長野市では約100名にご参加をいただいた。参加者からは、学生寮での食事やセキュリティー、海外プログラムの研修内容や費用、各学科のカリキュラム、入学者選抜における配点や面接の実施方法など、幅広くご質問を頂戴した。

昨年度の説明会に比べ、説明内容が具体的になったことから、ご質問も、より詳細で現実的なものになってきており、長野県立大学への志望を真剣にお考えいただいていることが伝わってきた。会場で実施したアンケート結果からは、本学の特長である少人数授業や海外プログラム、学生寮などに魅力を感じていただいていることが見て取れる。また、グローバルマネジメント学部を志望したり、関心を示したりしている高校生が一番多く、グローバルマネジメント学部の認知度も徐々に浸透してきていると思われる。

今後は、今年中にあと3回の大学説明会を開催するほか、個別の高校訪問などを通じて、引き続き県立大学での学びを直接知っていただけるよう、積極的に取り組んでまいりたい。

 

Q 県立大学においては1年次「象山学」と銘打った授業を行うとのことである。これは信州の生んだ偉人、佐久間象山に因んで命名した授業で、「長野県内で活躍する企業経営者などの多様なゲストスピーカーによるオムニバス講義で、自らの生き方や将来像を考えます。」とのこと。

これも、大きなくくりでは信州学の発展した形なのかなと思うが、象山学は信州学を踏まえさらに発展させたものと考えて良いのか、それとも全く異なるものなのか、伺う。

A(県立大学設立担当部長 )象山学は、起業をしたり、新規事業に取り組むなど、ものづくり、サービス産業、農業など様々な分野で活躍し社会に貢献している方々を、ゲストスピーカーとして招き、自らの体験を学生に語っていただき、ディスカッションをしてもらう授業。この授業の狙いは、現実の社会に生じている様々な課題と、それらをどう克服してきたかについて、学生が、単に知識として身に付けるのではなく、自身の問題として考え、社会に貢献していく方法を学んでもらう点にある。

県内高校生が、信州学において、地域の姿や課題を知った上で、新県立大学で象山学を学ぶことは、主体性を持って地域に関わっていくという信州学の狙いを、さらに深めるものであると理解している。

 

 

Q 最近、興味深い話を聞いた。今年の10月に地元の飯山高校1年生を対象に、「地域創生と信州学に関わる意識調査」が行われた。

一部を紹介すると、「高校生による地域創生の活動が全国的に広まっていることを知っていますか?このような活動をどう思いますか?」との問いには、知っているが6%、知らないが89%との回答でしたが、「楽しそう」、「やってみたい」そして「やってみたいがきっかけが無い」と答えた人の割合が34%だった。

また、「私たちは中野・飯山地域を様々な活動を通じて活性化させたいと思っています。この活動を一緒にやりたいと思いますか?」との問いに対しては、一緒にやりたいという回答が実に64%であったとのことである。

「地域創生」ということばを漠然と捉えている彼らであっても、信州学が意図していることを理解し、次のステップとして、自分たちには何が出来るのだろうか考え、実践してみる、ここまで進めることが出来れば本当に素晴らしいことと思う。

「ふるさとは 遠きにありて 思ふもの」と室生犀星は詩っているが、生まれ育ったふるさとを愛し、貢献したいと考える人も沢山いる。旧下水内郡豊田村、現中野市が輩出した偉大なる国文学者高野辰之先生が作詞し、誰もが歌える国民的唱歌「ふるさと」の3番に「志を果たして いつの日にか 帰らん」とある。

願わくば、鮭が生まれた川に戻ってくるように、若者達には「志を果たして」ではなく、「志を果たしに」ふるさとに帰ってきて欲しいと思う。

「信州学」が名実共に「教育県長野」の復活・再生、その突破口となるよう、心よりご期待申し上げ、質問のすべてを終わる。

 

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